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2012/8.8 名機RZエンジンのレストア 患者さん5号機
名機?RZエンジン のくたびれた姿ですが、患者さん5号機として手を入れます。
ウワって感じですが まっ いつもだいたいこんなもんです。
はじめっからきれいなら、レストアする必要はありませんのです。
したがってレストアとは、始めがひどければひどいほど真価が問われるのです・・・・・
と変な納得です。
キック降りずということで入手しました。キック降りずということはピストン焼きつき、クランクベアリング破損などいろんなことが考えられます。
少し錆が出ていますがペーパーで修正出来る範囲です。再使用可能です。ピストンも同じくOKレベルです
また左側にはフライホイールがありますが、ここはクランク軸とテーパー勘合しており特殊工具がないと抜けません。いや特殊工具でさえ抜ないときがあります。このときはだれかさんのゴッドハンドが必要です。
ここでしくじるとかなりやっかいなことになります。まっ クランクを諦めればいいんですけど。
ピストンは問題なしです。
クランクは錆がひどく再利用はこのままでは無理でした。クランク室の中に水が入っていたようです。保管状態としては最悪のパターンです。RZ250のクランクはいまや貴重品です。RZ250R以降はまだ部品がありますが、RZ250は完全に玉数が減っています。ただこのクランクは組み立て式なので、しかるべき所へ頼めば分解修理が可能です。ただしそれなりの費用がかかります。
コンロッドはだめレベルですが、これはまだ新品がでます。今回は手持ちクランクとセットで交換です。
中身をすべて摘出して、まずケースからきれいにしていきます。2サイクルのケースはたいてい外側には2サイクルオイルと砂が混じって石の様にかたくなったものが厚さ3mmくらい堆積していることが多く、これを落とすのが一番面倒で汚れ作業になります。サンドブラストがあるのでかければきれいになりますが、ブラストの砂が内部に残るのが嫌でなるべく使いません。
3枚目の画像の中心の穴はスピードメーターギヤが通る穴ですが、右側に三日月状のプレートがついて2か所の穴にネジで固定しシャフトを抜け留めするようになっていますが、なぜか分解時いつもネジがなめてしまいます。整備書で見るとネジロックを使用しているようです。それで完璧にロックされて分解できないのです。ここにそんなことする意味あんの・・・まったくー・・・・。
どうするかというと、こういう場合の常とう手段がありまして、いじっている人はたいてい画像から想像がつくと思いますが、思い出したくもないような作業です。
今回も少しネジ穴が変形してしまいました。奥の方に余裕があれば奥にタップを切り込み、取り付けネジを長くして対処します。それでもだめならネジを一回り大きなネジで切りなおします。このばあいはM6をM8へサイズアップします。
ケースとしては外観はすこし錆汚れありますが、ベアリング受け面は良好です。
特にクランクベアリングの受け面はベアリングについている回転止めピンを挟みこんだりまたはつけ忘れたりすることで、凹んだり回転筋傷が付いていることがままありますが、このケースはOKです。このケースは一度も分解されたことがないように見受けられます。
オーバーホールに必要な部品を発注しました。これだけで結構な値段になりますが、まだ出てくるだけましです。30年前のモデルですので、部品が出る機種は限られています。
RZはヒストリカルシリーズで部品が優先的に残されているようです。またモデルが長かったり、他車種からの流用可能部品があるようです。
部品がほぼそろったので組みつけに入ります。ここまでが大変でした。何でもそうですが段どり8部というやつですね。
1)ヘッドボルトにタップをかけてさらいます。ヘッド締め込み時にトルクが正確にかかるようにします。
2)シフトシャフトオイルシールを交換します。ここは消耗が激しいところですが、意外と作りがチャチです。
・ミッションギヤの組み付け
3)シフトドラムを組みます。
4)そしてシフトドラム位置決め用半月キーを取りつけて、皿ネジをショックドライバーで固く締めこみます。
1)そしてシフトフォークを組みますが後ろ側の2つあるシフトフォークの位置に迷いますが、このフォークのフォーク幅は異なっています。後ろ左側のシフト爪幅が広いです。
2)シフトロケートローラーをネジ止めしますが、ここは整備書のとおり、ネジロック剤を使います。
3)ここはクラッチのプッシュロッドですが、ここも摩耗していることが多いです。設計ミスですね。オイルシールは無条件に交換します。ロッドも段付き摩耗していることが多いです。
4)そしてドライブシャフトですが今回はドライブスプロケットを固定するネジ部が錆びて機能しなくなっていますんで、ドナーからシャフトを摘出して交換します。互換性の問題からギヤは現状をそのまま使います。下側のシャフトがドナーのシャフトです。
1)これはドライブシャフトのカラーですがこのエンジンのカラー右側は亀裂が入っていました。画像で右側真上に縦に一本縦筋が入っています。これも交換です。
2)ドライブシャフトのスプロケ側オイルシールも無条件で交換です。ここも段付き摩耗が発生しますので、先ほどのカラーを反転して差し込みます。
3)ミッションの組み付けは完成です。
4)次にクランクを在庫のなかから良いものを探して、左右のベアリングを交換していきます。
1)クランクベアリング左右ともに交換です。
2)コンロッド大端部ベアリングはきれいです。
ここでクランクの精度について確認するのですが、測っていくうちに有ることに気が付きました。
このクランクの中央にあるラビリンスシールにところどころオイル通路のような溝があります。
これはRZにはありません。RZRにはあります。
またフライホイールの幅を測ると54mmあります。これはRZRの数値です。(RZは52mm)
さらに外幅も157mmほどあります。(RZは154mm)+3mmでケースに入るでしょうか。
そしてコンロッド大胆部の厚みは17mmあります。これは
RZRの数値です。 しかしウエブ間寸法(中央のベアリング幅)は50mmありましたのでこれはRZ
に合致します。(RZRは48mm)またコンロッドのピッチは102mmでRZに合致しています。
つまりこれはRZR用クランクをRZ用にモディファイしているということになります。
この状態でケースに問題なく収まりました。どのようにやったのでしょう?オークション入手品なので
やり方が分かりませんが、これはRZの弱点であるコンロッド大端部の補強を狙った物と思われます。
フライホイールの干渉も手で回した限り問題ありません。どなたかやり方を知っていますか?
教えてください。
3)左右ともにいいと思います。
4)そしてクランクの両サイドオイルシールも無条件で交換します。シールの向きに注意が必要です。
鉄が見える側が外側で組み付けます。
1)これで準備が整ったので、ケースを合わせる作業に入ります。上ケースにはスピードメーターのドライブギヤを組み付けておきます。これは後からは組みつけられませんので忘れないようにしなければなりません。そんなことはないでしょうと思うかもしれませんが過去に忘れたことがあります。両ケースの合わせ目をシンナーで十分に脱脂して、ヤマハのボンド4号を両面に薄く塗ります。ここからはボンドが渇く前にケースを合わせなければならず、時間との勝負です。ここでもっとも注意が必要なことは、クランクのベアリング4個それぞれにある連れまわり防止用の突起をケースに噛みこまないことです。これをやりますとケースがお釈迦になりかねませんし、ボンドの塗りつけもやり直しになります。これも過去に経験した痛い思い出です。まれに突起そのものが脱落してケースの中に落ちている場合がありますが、その結末は想像が付きますね。
組み付け前には、各部の滑り面やベアリングには初期なじみの為に十分に2サイクルオイルを供給しておきます。
2)何とか組みつけました。この状態で上のボルト、下のナットの順で仮締めします。ここは2段階で締めこむように指示書が書いてあります。
3)なんとかできました。
4)ケース上下の固定ネジを2回に分けて締めこんだ後、トルクレンチで管理します。
5)クランク右側のプライマリーギヤですが錆びてしまっていますので、交換です。 これが錆びるのは珍しいです。
1)スピードメーターギヤードライブスプロケット(白い奴)をセットし、次にその駆動ギヤ中央を取りつけます。ここにクラッチケースに有るギヤがかみ合います。次に左したのキック用ギヤを組み付けます。クラッチを切るとここの駆動はミッションに伝わらなくなるので、プライマリーキック方式というのでしょうか?ミッションが入っていてもキックできます。下側の不思議な形をした部品は、シフトドラムを回転させるシフターです。
2)次にクラッチケースを組み付けますが、ここはプレーンガイドブッシュ方式で高荷重に耐えます。そのあとクラッチのインナーケースを取りつけ、そこに特殊工具を掛けて中央の固定ナットをトルクレンチで管理して締めこみます。900kGで締めました。そのあと回り止めの舌付きワッシャーを起こします。
3)クラッチ駆動部です。外周側の大きなクラッチケースはクランクとかみ合って常に回っています。内側の等間隔のスプラインのあるクラッチインナーはミッションと直結していますが、このままでは空転します。この外ケースと内ケースの間にフリクションプレートが入りそれをスプリングで押さえます。
4)スプリングで押さえられた状態ですが、この状態でフリクションプレートが動力をミッション側に伝えます。
そして中央向こう側からプレッシャープレート(6個のスプリング付きボルトで押さえられている)をクラッチプッシュロッドで手前に押し上げることで、クラッチが切れたという状態になります。
エンジン左側のマグネトーコイルとマグネトーホイールを組み付けます。ここのナットもトルクレンチで管理します。
右側の白いところへ青い配線が一本行ってますが、ニュートラルスイッチです。白いところはプラスチックで出来ており絶縁されていますが、裏側のシフトドラムに一か所接点があるので、その位置にきたとき青い配線が導通することでニュートラル位置を拾っています。
なんでここでこんな画像がでるんだって?
元に戻っちゃってるじゃん。
そうなんです。画像の変な格好をしたパーツ1個つけ忘れたんです。これはミッションのドライブシャフトを固定する重要なパーツです。これを付けないで9000回転回したら、この手前に着くクラッチケースアッセンブリーごとサイドカバーを突き破って外れてきたかも・・・・。
やり直しました・・・・。
ここまでで腰下の組み付けはひとまず完成です。この後腰上の組みつけに入っていきます。
1)ピストンの状態 ヘッドにはカーボンが厚く堆積しています。スカートの擦り傷などは非常に少ない状態といえると思います。
2)ピストン関係を完全にばらします。リングはきれいです。右側がリングですが一番下のペラペラしたスプリングの様なものがセカンドリングの下から出てきました。こうなっていたっけかなー
追記 調べてみるとどうやらTZR250用の様です。互換性があるのですね。普通は入っていません。
ピストンピンには摩耗が見られたので、手持ちのなかからドナー見つけて交換です。
ピストンヘッドのカーボンを落とし、スカート部の当たりも調整します。
3)ー7) シリンダー内部の状態 錆模様の様な物がありますが、深い傷は見られません。
このまま再利用出来そうです。左右分の画像です。
シリンダーの上下面をきれいにしていきます。
1)ピストンを汲みつけていきますが、コンロッド小端ベアリングは無条件で新品に交換します。取り付け時にピストンピンクリップは片側は先に取り付けておきます。またクリップをケース内に落とさない様にウェスでカバーしておきます。クリップの溝への固定はコツが要ります。慣れないでやるとピストンに傷を付けてしまいます。
2)ピストンを付け終わり、次にシリンダーをかぶせますがシリンダー下面のシールは新品にします。圧縮比を調整する場合、この座布団を2枚にするテクニックもあるようです。2枚にすると圧縮が下がりますね。ボアアップした時などに有効です。またクランク室の見えている範囲に2サイクルオイルを出来るだけ供給しておきます。
3)シリンダーが付きました。だんだんエンジンらしくなってきました。
4)シリンダーヘッドです。傷や凹み デポジットなど異常はなくきれいです。下に有るのは純正の新品のヘッドガスケットですが、メタルタイプとなっています。
ここまでくればひと段落です。ヘッドナットを2段階に分けて250kGでトルク管理して締めこみます。
手でマグネトを回してみると圧縮もちゃんと出ているようです。
右サイドカバーはすでに取り付け済みです。左側カバーはまだ点火時期調整が残っていますのでそのままです。
点火時期調整です。プラグ穴からダイアルゲージを差し込み、ピストントップを出したあと、2mm戻したところが正規点火時期です。ここの時点でコイルが取り付けられたプレートの指針をFマークに合わせます。