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キャブマスター その1
キャブマスター その2 本ページ
プレッシャーコントロールベンチェリー開発 こちら
参考 ”ウェーバー・ソレックス・OERキャブ弱点克服”記事は こちら
2021年6月4日
プレッシャーコントロールベンチェリーの開発
略称 プレコンベンチェリー
このエンジンは私のサーキット用S31Zのフルチューン仕様で製作したエンジンで、キャブレターは定番のソレックス50ではなく、ウェバー50を使っています。ウェーバーはソレックスと比較してフロートチャンバーが深く大きいのが特徴です。
立ち上げ当初は4000rpm付近での激しい回転段付きに苦しめられたのですが、いろいろ工夫して何とかサーキットで走れるようになってきてとうとう富士スピードウェイで2分13秒までタイムを詰めてきたのは こちら 富士スピードウェイへの挑戦 で掲載してきました。
私はA/R空燃比計を取り付けて燃調を見ているのですがなぜか4000rpm(普通3000rpmの場合が多いのだが)での段付き時には空燃比は18を割るほど超薄い状態になっていますので加速が出来ません。そのまま我慢していれば次第に復活してきて5000rpmくらいからまた普通の加速と空燃比に戻ります。
いわゆるキャブのつながりが悪いという状態です。ジェットやエマルジョンチューブなどいろいろ換えてみるのですがその効果がほとんど現れないのがこの現象の特徴です。この部分の状況は こちら スポーツキャブの調整ーその2 で詳しく述べております。
最終的にはアウターベンチェリーを特殊な形状にすることで完全にこの問題をクリアーできたのです。私はこのアウターベンチェリーをプレッシャーコントロールベンチェリーと呼んでいます。略称プレコンベンチェリーです。ベンチェリー径は標準設定のφ46からあまり小さくしない方向で改善することが目標となります。なぜかというと
この時ただ内径の小さなベンチェリー、例えばφ43に変えただけでは問題は解決できなかったのですが、それは4000rpmが改善しても今度は高回転6000rpm以上の空燃比が異常に濃くなってしまうことが起こるからです。空燃比で10を超えるくらい濃くなり、排気は真っ黒の煤のようになって来ます。
さて、今回私と同じ症状で苦しんでいるという方からこのウェーバー50セットの改善を依頼されました。エンジン仕様は私のとほとんど同じフルチューンで、キャブも同じウェバー50新品で、症状としてはやはり4000rpmで回転段付きが出てしまうというもので、その時の空燃比は非常に薄くなっているというものです。
今回はこのキャブで私のと同じ対策をして同じように改善できるか追認を行うという形になります。
ベンチェリーやジェット類を確認する為分解してゆきます。キャブとしては現在販売されている新品の商品です。ウェーバーは今もほとんどのサイズのキャブを新品で入手することができます。
キャブをマニフォールドに固定している部分ですがボルトとキャブ胴体が近すぎるのでワッシャーとスプリングワッシャーが切り欠きを付けて止められていますので注意必要です。ナットは通常に回せるので問題はないです。キャブの胴体に機械加工で削りこみの逃げ加工が有るのが分かります。Φ50の場合このようになっています。
1番キャブのエアーファンネルを外したところで問題点が有ることが分かりました。よーく見るとキャブ胴体の左側に変形が見られます。
そのためインナーベンチェリーを外そうとしてもここが引っかかって抜けません。結局かなり無理に引っ張ってやっと抜けたという感じです。
外してみるとキャブ胴体がはっきりと変形していることが分かります。エアーファンネルに変形は見られなかったのでキャブ単体の状態で落としたか何かで変形したのではと思います。ここのアルミ肉厚は全く薄いので内側から押して修正することは不可能ですので、少しグラインダーで削って修正するしかないかもしれません。
インナーベンチェリーですが鋳物のバリなどがあり造りが少し荒いかなという感じですが問題ない範囲と思います。以前の物はガソリン通路のサイズが刻印されていると思ったのですが、現行品は刻印が無いようです。この後良く調べたら外周に”5”の刻印が有りました。これは私の古いウェバー50と同じサイズです。
他のキャブも順次外してゆきますが、胴体の変形は1番のみで2番、3番は問題ないようです。
インテークマニフォールド
シャフトの支持がブッシュ入りの3点支持となっていますので良いマニフォールドです。支持ブッシュが両脇の2点しかないタイプもありますが、なるべく3点支持にした方が良いです。ただ、このインマニにも少し問題が有ります。
ここの鋳物ボスが有る部分にディストリビューターのバキュームアドバンス用の負圧を取るジョイントが欲しいのですがこのインマニには加工がされていません。ディストリビューターをバキュームアドバンス無で固定してしまう場合は不要ですが、常にフルスロットルで走るのならともかく、通常走行では困ることになります。
依頼されたピッカピカのウェバー50には私の作ったプロコンベンチェリーをセットしています。キャブが当時物と全く同じかというと微妙に違うところもあるのでベンチェリーのセットも合わせては不一致部分を削ったり追加工したりしてぴったりと合うようにします。プロコンベンチェリーはそれくらいシビアなところを追求していますのでセットは慎重にしなければならないし、再度分解したときはそのポイントを押えてしっかり確認しないと元の通りにはならない場合が有ります。
上側列は私の今使っている当時物イタリー製のウェバー50を取り外したもので、今回下側の依頼品が間違いなく性能を出すかどうか実際に私のS31Zに取り付けて確認します。そうしないと何が正しいのかの確証が取れないので身を挺しての確認です。
私のS31Zで、今はウェーバー50を取り外した状態です。
依頼品の再販されているウェーバー50に私の作ったプロコンベンチェリーをセットして、エンジンに取り付けていきます。
3基ともに取り付けてリンケージも仮付けしています。このあとエンジン始動して、当然ですが1っ発始動でアイドリングもものすごく安定しています。ジェット類はほぼ私のと同じセットにしています。
過去 現在
メイン 230→190
エアー 235→260
アイドル 65→
プロコンベンチェリーに変えることでこれだけ差が出てきます。アイドルは私のは55ですが、まずは65のままで行きますがおそらく55でもOKでしょう。
この状態で即試験走行に出ましたが、ほとんど完調の状態で、当然ですが私のとほとんど同じ燃調になっています。アクセルの極開け始めの一瞬だけ燃調が薄くなりますがそのままアクセル踏めばきれいに加速して行きます。走るのが楽しくなる、わくわくする感じのふけ上がりです。この後さらにジェット調整して行けばさらに良くなってゆくことでしょう。少なくとも3500rpmでボコついて加速せず、何を変えようが全く反応なしのかつての状態からは脱しています。
プレッシャーコントロールベンチェリーwithトルネード
ウェーバーΦ50
名前が長くなってしまうので略称
プレコン 50 と呼んでいます。
左がインナーベンチェリーウェーバー50用
右が開発品 プレコン50
です。
拡大画像
内径はφ43 他の径でも製作可能ですがトライではこの径が最も安定していました。この画像でトルネード溝がよくわかると思います。エンジンに近い場所でトルネード渦を作るのでガスの流れが改善されると思います。
ウェーバー50にプレコンを組付け
インナーベンチェリーをセットした状態です。
プレコンベンチェリーの核心の部分ですが、プレコンを取ろ付けたところをキャブのエンジン側から見るとこのようになっています。画像ではアクセルを少し開いて3000rpm~4000rpmの状態を再現しています。
L型エンジン用6個セット
反対側からの画像
キャブアッシーの状態です。
私は現在この100mmロングのファンネルとファンネルネットをセットして使っていますが、これらは個々のセッティングとなります。
ソレックスφ44にて3000rpmでの回転段付きの改善内容がこちらで見れます。
方法としては本ページと同じプレッシャーコントロールベンチェリーによるものとなります。
ソレックスφ44 L3.0 73度カムセミチューンエンジンでも3速2000rpからアクセルベタ踏みで
6500rpmまでフレキシブルに段付きなく加速する状態にできます。