S20エンジンご用達、R192デフのオーバーホール
ハコスカGTR Z432 Z432R ハコスカGT S30Z
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2023年7月10日
R192デフ修理 R35
デフが続きますが徳島の方からR192デフの修理依頼です。このデフはフロントフランジを手で回してすでにうまく回らない状態、相当内部はひどい状態が予想されます。
外観的にはかなりきれいな部類に入ると思います。デフケースもデフカバーもボルト類も全部きれいです。
デフカバー外しましたがギヤ比はハコスカGTRご用達の4.875
デフ玉取り出しました。
リングギヤが何やらひどいことになっています。歯の角に叩かれたような跡がたくさんあります。
そして気になるのはbの矢印のほうで歯の根元に楕円形の模様の様なものがほぼ全歯に見られます。
LSD玉です。
イニシャルは全くのスカです。
ばらしてゆきます。
2ピニオンであることがわかります。が実はこの画像の中ですでにおかしなことが見えています。
プレートは純正の4枚構成でかなりすり減っていますがそれにしてもイニシャル”0”というのはおかしいです。大抵はこんな状態でも3Kgくらいは残っているもんです。
矢印の様なLSDのカムが左側には2か所あり、2ピニオンですから当然ですが、右側にはなんとこれが4か所あります。ので、こちらは4ピニオン用という事になります。なんでこんな組み合わせなんだろう。何か破損とかあってありあわせのもので修復したという事だろうか?
それだけならよいんですが左側のプレッシャーリングの厚みは31mmなのに対して・・・・
右側の4ピニオンは厚みが30mmしかありません。おそらく4ピニオンはプレート6枚構成にすることが多くこのように各パーツの厚みを少しずつ削って2枚プレート増ししているのだと思います。
カムの部分も計りましたが同様に1mmの差が有りました。
従いましてこの組み方ではプレートはちゃんと入っていてもクリアランスが1mmも大きくなるので、イニシャル”0”で不思議はないことになります。
ピニオンを外しましたが、ピニオン側は軸方向にガタが3mm以上あり案の定ダブルナットの緩みが起きていました。R192はピニオンのプリロード調整を画像の様なダブルナットで行っており、しかもこのダブルナットがデフケースの奥深くに隠れているというところが最大の難易度の部分なのですが、ここはかなりのスキルと経験が無いと作業は難しいと思います。
ピニオンにもたくさんの打こんの様なものが付いています。
刃先も全歯つぶれてカエリの様なものができてしまっています。
ピニオンプリロードのシムは何かの鉄板を切り抜いたようなものが入っていましたが、これはちょっと無理がありすぎる気がします。正式なシムが手に入らなければ仕方がないといえばそれまでですが、私はこのパーツを焼きの入った合金鋼で復刻製作していますので、こんどはちゃんと交換して行きます。
不思議なことにほとんどの個体がベアリングレースは限界まで消耗しているのですが、この個体についてはまだ限界までは行っていない感じです。
状況をまとめてみると
・LSDについては効きはもう捨ててできるだけクリアランス調整して、このまま組み戻すか
OS技研の特注スーパーロックなどの社外品へ交換するかの選択となると思います。
(スーパーロックの例は R192 その5、 R192 その6 等)
・リングギヤとピニオンギヤはあちこち打こんだらけですが、やはりできるだけ修復手直ししてこれを組むことは
できますが、そのように直してもうまく機能するかどうかの保証はできないと思います。少なくともかなりの音
は出ると思います。
・あるいはほかにオーナー様が手持ちでギヤセットを持っているようでしたら状況は非常に良くなります。
R192の中古品はもうオークションでもめったに出てこないし、出たとしてももうすごく高額になっています
ので入手が難しいです。
・最終手段としてはR180に思い切って変えてしまうというのも一つの選択だと思います。
以上、オーナー様とご相談となります。
オーナー様のご判断として今回のR192の中身は使えないという判断となりました。
後はほかのR200やR180に替えるかという事になるのですが、私のほうでも在庫のデフを調べてみたらR192が有りましたので仕様をしらべてみます。
LSDもついていて今回のドナーには適します。LSDとしては2ピニオンとなります。
ギヤ比としてはGTRで標準的な4.444となっていますので、ギヤセットとしてもばっちり使えそうです。
オーナー様もいろいろ手持ちデフが有りますようなので、さらにご相談となります。
オーナー様とご相談の上、デフの中身はすべてこちら側のドナーから移植することになりましたので、ドナーを分解して使用する部品を取り出してゆきます。
ピニオンギヤ・リングギヤ・LSDはこちらのドナーから取り出して使います。
LSDとしては2ピニオンですが中身はしっかりしています。
世の中では2ピニオンと4ピニオンとでは4ピニオンのほうが人気が有りますが、同じイニシャル設定条件では性能に差は有りません。4ピニオンのほうが丈夫にはなるでしょうが2ピニオンでもピニオンが壊れたという話はあまり聞かないので実用域では差は無いと思います。
ただ、4ピニオン品はLSDプレートを少し厚めにしたり、カム角が大きかったりしてスポーツ用の仕様に設定している場合が多いので効きが良くなっていることはあり、人気が有るのでしょう。2ピニでも同じような仕様にすれば性能は同じになります。
LSDを組みました。
ピニオンプリロードの調整をいつものように実施して、プリロード11.1Kgを得ました。ピニオンナット締め付けトルクは23Kg/m
LSD玉を収めて、サイドフランジの設定に入っています。サイドフランジベアリングとしては
サイドベアリングプリ 4.5Kgで設定
この時のバックラッシュ 0.14で
調整しました。
刃当たり前進側
刃当たり バック側
すべて条件だしが完了したので、最終組付けに入ります。フロントオイルシール取り付け
ここにベアリングが有ることがR192の大きな特徴です。
サイドフランジのシールを取り付け。
サイドフランジ取り付け
サイドフランジは内側でスナップリングで抜け止めしてあります。
支給されたサイドフランジのドライブシャフト取り付けボルトがこのように圧入が緩んで抜けています。ここは次に車体に組付けるときはドライブシャフト取り付け時ボルト頭の切り欠きがちゃんと収まった状態で締めるようにしないといけないです。そうしないとドライブシャフトの不完全な締め付けとなり緩んでしまう事が有りえます。
ほぼ完成となりました。