2014年4月1日
マッチョなHLS30がやってきた
ミッションつながりで訪問してくださったこの左ハンドルのS30の持ち主といろいろお話していたら、なんと私のグリーンのS30Zの元の持ち主と顔見知りというか、このHLS30を購入する以前に車を探しているときにグリーンZに出会ったとのことで、ただならぬリンクを感じます。
ただ、このマッチョZなんですが、購入当時から前の持ち主がいろいろ改造してあり、その上に持病を抱えているとの事で私の所でなんとかならないかと見てみることになりましたが、前途多難なようです。
でもグリーンZとのリンクを大事にしたいと思います。
エンジンはL28刻印で、キャブはOER タコアシもステンのかっこいい形状してます。
ブレーキマスターはなにか他の車種流用していてマスターバックがすごく大きく効きは強烈です。
足回りも問題ないようです。
ただ、クラッチの滑りがひどく5000rpm以上では吹きあがってしまいます。
OERキャブの不調
エンジンとしては調子は悪くないのですが、このガソリンのオーバーフローに泣いているとのことです。
オーナーはキャブのフェールラインにレギュレーターが入っていないので撚圧が高くオーバーフローしているようだと判断しており、レギュレーター含めラインとキャブの見直しをすることになりそうです。
この画像は1番キャブですがファンネルの奥のベンチェリーの下側に生のガソリンがいい色して溜まっているのが見えます。他の気筒も同じような感じで、極めて怖い映像です。消火器が手放せない感じですね。
OERとしては type45
no5D27
メイン #130
エアー #200
アイドル #45
ニードル #1.8
ポンプジェット #40
そして次の厄介な問題は 電気系統です。これはZの鬼門ですね。
最初に東京からご訪問の時は1往復問題なく走れたのですが、今回こちらに来る直前にワイパーが動かなくなってしまった。で、コンビスイッチあたりの配線を触っていたら、今度はヘッドライトがつかなくなってしまったとの事。
そして、何とか昼間の晴天を選んで強硬でこちらに来る途中で今度は東名高速でタコメーターが動かなくなってしまったと、なんか電気ヤバイです。
整備要領解説書についている電気配線図ですが、これがすごく分かりずらいというか見る前にすでに拒否反応がでます。自分はこれを理解できないと最初から思いながら見るので全く頭に入ってきません。
自動車会社などの製造工場にはこの電気を専門に扱うPM(プロダクトメンテナンス)という専属修理屋さんがいて工作機械の電気系統が故障するといろんな検査機械を駆使して直してしまいます。私も時々それを見たことが有るのですが、この画像の様な配線図の端っこから一個ずつしらみつぶしにテスターでチェックしていきます。不具合か所とは関係ないところも含めてすべてしらみつぶしです。それがプロというか電気技師の学校でたたきこまれる掟の様です。
横で見ている私にはなんでそんな関係ないとこ調べるのか不思議で、ここが原因でしょと指差したくなる様な段取りですが、やはりそれがプロですね。でも、電気のプロでない私はいきなり本能の示す場所に真っ先に行きます。
とにかく全く理解できないのはメインキースイッチを回したとたんにメーターのイルミネーションが点いてしまうことです。通常はライトスイッチを回さないと点かないはずなんだけど。
で、メインキースイッチを外して分解です。
ばらばらにしました。個々の接点が金属粉などで隣同士で導通するようになるととんでもないことになります。内部は案外単純にできていますね。接点がやはり焼けていますが、大きな不具合は見当たりません。
接点を磨いてから復元します。
ライトは後回しにしてワイパーの本体をチェックします。
ワイパーはちゃんと機能しないと車検に通りません。ウインカーなどともにワイパーとウインドーウッシャーは検査員が直接確認する検査項目に入っています。ワイパーがそれほど特別重要とは考えにくいのですが、なぜかそうです。ウインドウウォシャーもチェックされます。
チェックしましたがこのモーター本体の動きも特別問題は見られません。
かなり行き詰まってきたのですが、何回もメインキーを回してイルミランプが点く不具合現象を再確認しているうちにグローブボックスのあたりで通常のリレー音とは異質のちょっと大きなリレー接続音がしていることが気になりだしました。リレーですから当然接続時に音が出ますが、普通に聞く音となんか違うのです。
で、グローブボックスを外してその裏にあるリレーを確認して手で動かしている時に突然イルミランプが点かなくなることが有ることに気がつきました。
最初はこのリレーが原因だと思って交換して何回かはOKでしたが、数回メインキーを断続するうちにまたもやイルミ点灯の不具合が出だしました。
でも諦めません。このリレーを触って現象に変化が出るのは明白ですので、その付近をいろいろな方向から動かしてみますとある特定の配線を触った時にイルミが点かなくなることを発見しました。
かなり確信にちかずいていますが,この画像の中に不具合の原因が有ることをとうとう発見して修正することができました。ライトもワイパーも普通に作動するようになったのです。
ただ、あと2つだけ問題が有ります。ライトの左側だけ照度が低い様です。これはこの古いs30zには結構有る話です。実用上は何とかなりますが、車検時はNGとなります。もう一点ワイパーは通常に動く様になったのですが、ウインドウウォッシャーが出ないのです。
ウインドウウォッシャーですがスイッチのところから追って行ってウォッシャーのプラス側に電源が来ていないことが分かりました。バッテリープラスからこのスイッチまでのどこかで断線しているものと思われますがそれがどこかを追求するにはダッシュボード裏の配線をずっと追っていかねばなりませんが、時間的にやり切れません。で、画像の黄色の線を追加してプラス電源拝借です。(これは電気屋さんから見るとすごくまずい例ですから真似しないでください)これでなんとタコメーター不動、燃料計不動も治ってしまいました。ただ、いつまた同じ様な断線に見舞われるか保障がありません。完全にするにはやはりダッシュ裏すべて分解する必要がありそうです。
ミッション交換
メインの対策であるミッションの交換に入ります。
クラッチのすべりもひどくアクセルを強く踏み込むと簡単に吹きあがってしまう状態でした。
内側はオイルでべとべとです。
オイル漏れが有ったようです。
そしてクラッチですが、フェーシング面が焼けてべこべこです。
クラッチ板は3枚羽のメタルタイプのようです。
プロペラシャフトですがこんな風に変形が見られました。1周半ほどらせん状にネジを切った様に凹みができています。見た感じからしてすごく大きな力がかかってねじられた余波で出来たような感じです。
このHLSは前期ボディーなのでプロペラシャフトが短く、私の手持ちでもスペアは有りません。
いままでこれで何ともなかったので、このままいきます。良品が手に入ったら交換です。ペラシャフトの交換は簡単ですから後からでもいいです。
フライホイール側も焼けが見られますが、今回は交換メニューになかったのでこのまま行きます。
すぐに不具合が出ることは無いと思いますが、表面には細かい凸凹が有るのであまり良い状態ではないです。
外観からみてフライホイールとしては純正ノーマルの様です。
さらに、このプロペラシャフトの差し込み部ですが摩耗していてだめレベルです。このまま使うとミッション側のオイルシールもやられてしまうので対策します。
本体側の変形もあるのでそっくり交換した方がいいですけど、前期タイプのこの35mm短いペラシャフトはなかなか入手できません。そこでこの部分のみ交換してしまいます。
ドナーの側の十字ジョイントを分解します。内部にはニードルベアリングのバラ玉が入っていますので、洗浄してグリースアップします。
こちらは今まで付いていた十字ジョイントですが、ベアリングはかなりグリース焼けしていて黒くなっています。
部品を整えてアッシーしていきます。これで当面は使用できるレベルに出来ます。
クラッチは依頼主の手持ちのものに交換していきます。
クラッチベアリングなんですが、高さというか長さがいろいろ有ります。左がいままで付いていたもので全長が59mmほどありましたが、いままでクラッチの継がりポイントが異様に高かったので、今回は右側の4mmほど短いタイプに変更します。
交換するミッションは71BコンパチCエキストリウムバージョンで、すでに出来ていますのですぐに交換です。前期タイプのボディーはミッションメンバーも取り付け方法が中期以降とは異なっていました。
OERキャブの不調修理・恐怖のオーバーフロー
ガソリンがオーバーフローしていますが、ここまで激しいオーバーフローはあまり見たことがありません。
油面高さが20mmくらいと高かく、規定の29mmに対して9mmも高いです。
エンジンの吹けあがり自体は問題なく普通ですが、プラグを見るとやっぱり真っ黒に煤けています。
仮に撚圧計を取りつけてみると0.5kG/cmほどあり、規定の0.2に対してかなり高い値です。
レギュレーターが入っていない燃料配管ですので、ポンプ圧がそのままかかっているようです。
キャブのアッパーカバーをはずしていきます。
ちょっと見えずらいですが、キャブのフロートニードルバルブが段付き気味です。
対策で依頼主か準備したホーリーのレギュレーターを取りつけます。ホーリーには機械式燃料ポンプ用としてこのリターン無しの低圧用と高圧用、あとリターン付きと3種類がありますが、今回はリターン無し用なのでその配管で改造していきます。
配管はこの様に取りつけました。レギュレーターを調整して0.2kでセットしました。
取りつけはすでに開いていた穴2本を利用してステーを製作して固定しています。
そしてアッパーボデイーにあるフロートニードルバルブもアッシーで交換していきます。
オーバーフロー対策としてニードルバルブも替えたし、レギュレーターも付けたし、これで完璧と思って試走にでました。走りは問題なく交換した71BコンパチCも問題なく、もちろんクラッチの滑りもありません。で、戻って確認すると・・・・。
この画像は1番キャブですがファンネルの奥のベンチェリーの下側に生のガソリンがいい色して溜まっているのが見えます。この画像は一番最初の画像と全く同じ状況なので再度撮影をする必要もなく画像流用できました。ひと手間省けたけど、さてどうしよう・・・・。
これはいちばんオーバーフローのひどい1-2気筒のキャブですが、キャブは構造や造りはかなり複雑ですが原理は極めて単純で、コップの淵にストロー付けて吹くと霧状になるのと同じですから、コップに穴が開いていない限り漏れることはありません。では何故漏れるかというとやっぱりコップに穴があいていると思います。で、OERさんに電話して確認しますとそこは触らないで、油面を29mm標準から31mmに下げてくださいとの指示でした。理由はよくわかりません。
私がコップに穴開いてんじゃないのとの問い合わせ(実際はそんな聞き方では無いですが)には、そこは分解禁止だといいます。理由は組みつけ後上面つら合わせ加工しているからとの事でした。
でも、コップに穴があいているとしたらここしかありません。構わず分解します。この様にエマルジョンチューブを取りつけるところはブロック状に上下2分割され、そこをオーリングでシーリングしていますが、ここがコップの穴最有力候補だとにらんでいます。
外してみると中央部フロートチャンバーの中の2か所ある小判型で2つ穴のあるジェットタワーの受け面は鋳肌のままでした。アルミ鋳物でダイキャストですからそんなに面は荒くは無いですが、すこし驚きました。機械加工出来ない面では無いので、やはりコストの問題でしょうか?
ここに前の画像で手に持っているブロックがゴムオーリングで押しつけられることでガソリンが漏れるのを防いでいます。ここの大きいほうの穴はそのままインナースリーブのガソリンが噴き出す剣先穴につながっています。
そしてこちらはオーリングが取りつく側ですが、8の字のような形をしているオーリングの受け面ですがやはりここも鋳肌でした。画像は私が有る程度磨いた状態です。目で見えるだけでもかなり凸凹が有ります。
ここも単体で機械加工出来るところですからコストの問題でしょうか。
でもOERさんは十分な試験をしてここは鋳肌でもシール出来ることを確認していると思いますので良いとは思いますが。
ソレックスとかウェーバーがどうなっているかは見たことありませんので不明です。
で、綺麗にしてからシーリングや締めつけを十分に確認してから再度組みつけて試験してみたのですが、ガソリンオーバーフロー現象は治りませんでした。
このジェットタワー部の合わせ面からの漏れは無いようです。ここのチェックはこの1基だけでやめます。
振り出しに戻りました。
今回はかなりガシャ漏れ状態ですので変です。多少の隙間からの漏れならにじみ程度のはず。こんなに漏れるのは、コップの原理から言えば入れすぎ 継ぎ足し過ぎです。するとフロートがうまく機能していないのかも。このフロートは樹脂製ですが金属のアームに取り付けてありますがそこの取り付けはかなり弱いようです。ちょっとしたことで左右に変形してしまいます。で、フロートが中で壁と擦れると動かなくなってしまう現象が考えられます。金属なら滑って動いてくれると思いますが。
結果的に言うと
1)燃圧が高かった
2)ニードルバルブが段付き摩耗気味であった
3)フロートが変形していた
4)パーコレーションがそれに輪をかけた
と考えられると思います。OERのインナーノズル剣先に繋がる穴の位置が低いことが根底にあるのかも。
対策として
さらにタコアシしゃ熱板に断熱材を張り付け、ボンネットをすこし開き気味にしました。
これで、ほとんどオーバーフローは解消しました。
試走してみるとプラグがこんなになりました。今までは真っ黒に煤けていたのに白く乾いていて明らかにガソリンが薄すぎます。試走で低速時の吹き返しとエンジンブレーキ時のアフターファイヤーを見ていますので、アイドルジェットが小さすぎと考えられます。またおそらくメインジェットも小さすぎると思います。
一筋縄では行かない電気
今回の試走は夜やったのですが、3kmほど走ったところでヘッドライトが死んでしまいました。たしか、ワイパーを操作した時だったと思います。街灯が無い真っ暗な中をポジションライトだけで走り帰りました。やっぱ電気も甘くない。再発です。
ヒューズボックスを見てみるとライト左右とワイパーのフューズは全部溶けています。
もう一度グローブボックスを分解してダッシュ裏の配線をチェックします。
この車はセンターコンソールのスイッチ類が全部改装されていますし、水温計と油圧計の追加メーターが有りますし、エアコン取りつけ時にかなり大掛かりな電気工事がされているようです。
そちらはもうどうなっているかは不明です。改装した時に電気配線図に追加分を記入してあればまだ類推することは出来ますがそれは有りません。やった人しか分かりません。
でもとにかく配線をチェックしているとすごく太い黒色の配線がカプラー外れていることに気が付きました。なぜかわかりませんがとにかく接続します。すると今度はフューズを交換しているにも関わらずライトとワイパーが動きません。どうもいずれもプラス側配線がおかしいようです。正しく対処するのはダッシュ裏の配線をすべてチェックすることですがとんでもない時間がかかります。で、ライトとワイパーはバイパス手術します。こんな画像の様なライト用のリレー配線を組んでバッテリーから直接プラス電源を取ります。ワイパーもプラス電源は直にここから取ります。いままで有ったプラス配線はフューズの所でカットします。いずれにしても暫定処置ですが、これでともかくまともに動くようになりました。
オーバーフローが解消したため再度点火時期とキャブのジェット調整をしました。点火時期はだいぶ早かったようです。ジェットはアイドルを#45から#50へ変更 メインを#130から#135へ替えましたが、このエンジンはかなりいいです。5000rpmから上のカムに乗った感じが鋭く加速します。
あと、ステアリングの癖がなおれば申し分ないですですが、これでかなり楽しい車になりました。
番外編
ドアーロックができなくなった
一通り出来たのですが、最後にドアーロックが出来ないことに気がつきました。
いままでずっと室内保管だったのでロックの必要がなかったのです。
でこの様になりました。
ドアガラスはずしてドアサッシはずしてドアロックリンケージを外します。
キーシリンダーを取り外してみると矢印部の爪がすりへって開いてしまっています。
この部分にすぐ後ろに写っているリンケージのステーがはまり込んでキーを回した時の動きをロックリンケージに伝えています。
この部分は金属ですが真鍮系のやはらかい金属ですので摩耗してしまうようです。
これでも新品を買わずに諦めません。
軸の180度反対側に新たな爪を削り出して行きます。
そしてこのようになり、爪を再現してドアを元どうり組みつけて無事ロックも出来るようになりました。