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240クロスのオーバーホールからコンパチ化改造まで
・240クロスを含めた71系ミッションの輪廻転生 記事はこちら
71Bのケースの中身のポルシェシンクロ・ギヤ類を71Bの最終仕様のワーナーシンクロで組みなおすのがβバージョンで、特徴はシンプルで有る事と、もちろんプロペラシャフトがスプライン差し込みがベストですが、スプライン差し込みペラをお持ちでない場合はフランジ結合のままでも組める事。
240クロスは全てポルシェシンクロですがこれをワーナー化するバージョンを開発
71BコンパチB’ 240クロス フランジでもスプラインでも可能
2020年3月30日
71BコンパチB’ 240クロス
240クロスは1速が2.9から始まる純正ギヤ比で、通常の3.3からはじまるギヤ比に対してクロスしているので純正ですが240クロスと呼ばれています。社外品のクロスもありますが2.4から始まるもの、2.7から始まるものなどかなりサーキットを意識した仕様となっています。
当時はポルシェシンクロが主流でしたので240クロスは通常は全速ポルシェシンクロです。画像をご覧いただけるとそれが明確に分かると思います。
リヤ側は例外なくポルシェの0.86ギヤ比となります。ここはギヤスラスト面の焼き付きが多発する部分だし、ギヤ比も現代の高速主体のドライブでは0.86では非常に低いギヤ比で、燃費や騒音に対してマイナスです。
240クロスのクロスたる所以のところはこの画像の中のパーツに付きます。他はノーマルS30Zのミッションと同じです。左から3速、2速、1速と上にカウンターギヤとなります。いずれもポルシェシンクロですが、ポルシェシンクロは今となっては補修が困難だし、部品も価格が高騰しています。(シンクロCリングが日産部品で1個で15800円となります。シンクロ4個だけでで63200円・・・わーーーー。
ただポルシェシンクロの味も捨てがたく、私はかなりこの純正Cリングを在庫してオーバーホール依頼に備えていますが。5速のシンクロリングはポルシェシンクロは現在純正新品は出てきませんので、中古品や在庫品でしのぐしかありません。
そこで今回はこの240クロスのギヤはそのまま利用してシンクロ機構をワーナーシンクロに変換してゆく改造を行います。さあ、ワーナーシンクロに変更いたしました。と言っても前の画像のポルシェシンクロ品と比較しても良く見ないとわからないかな。
歯数を数えると240クロスであることが確定いたします。特にカウンターの1速は71系の中では16歯と非常にレアな歯数です。
そしてメインインプットギヤ
ももちろんワーナー化していますが、これにもギヤ比があり、重要で240クロスはハイギヤード(22/31)となっておりますのでここをワーナー化することは重要です。
ローギヤード(21/32)の物は比較的楽にワーナー品が入手できますが、このギヤ比だとスポーティーという面では物足りなくなります。
2020年5月30日
71BコンパチB’ β18-240クロスワーナー
おおよそ2か月ぶりに復活します。
このミッションについてはコロナ禍の時節柄オーナー様のご希望でいったんキャンセルになったのですが、2か月ぶりに再開のご連絡をいただきました。私もいずれはこうなるかもしれないと思い、中断の状態のままで凍結保存しておりました。オーナー様の御意志には頭が下がります。
長い時を乗り続けて苦しい時期も過ごしてきたS30Z。あちこち壊れるが常に修理して手をかけて守ってきた。何度かあきらめかけた時もあるが、手放さずに今も自分のそばに残る、少しずつ毎日手をかけていつも自分の傍にある、そして自分の相棒となった。
フェアレディー S30Z
ワーナー化するにあたりハブも専用のものとなりますが、このハブは71Cよりも手が掛かっており高級設計です。(71Cでは原価低減されていますが性能的にはもちろん問題ないです)
1-2速のワーナー組
1-4速まで組みました。右の元のポルシェ組とは大きく異なることが分かります。
1-4速ポルシェ組。
5速側はもちろんワーナー化していますので、ポルシェの5速シンクロの欠品を心配しないで済みます。
そして5速の焼き付き防止対策で私が編み出した技スラストベアリング構築とM38ナットサイドロック仕様となります。さらに5速ギヤ比は現在の高速走行にマッチしたギヤ比0.75(0.83もあり)。
バックにまでワーナーシンクロが付いています。
こちらがポルシェ5速のノーマルの状態です。
5速のギヤ比は純正の0.86で高速ではずっとエンジンを高回転にしておかなければなりません。
ギヤ部は完成です。シフトフォーク類もすべてアルミで近代的な感じになります。この画像だけ見たらほとんどの人が 「 うーん 71Cミッションだね 」
と答えるのではないでしょうか。
ギヤ精度
1ST 3ND 3RD 5TH
EP 0.32 0.17 0.29--ー0.09
BL 0.08 0.10 0.07ーーー0.20
申し分ない値だと思います。
ケースに組み付けて回転試験機イーザナライザーで試験しています。240クロスポルシェシンクロミッションのギヤのみ生かして全てワーナーシンクロに改造していますが、問題なく普通の71Bワーナーと同じシフト感になります。ギヤは2.9から始まるクロスですのでL型の低速トルクを生かして楽しくドライビングができるようになります。
同仕様の240クロスワーナーミッションをお入り用の方はまだ何基か作れますので 販売のページ こちら からお知らせください。
ドライブシャフトの準備も依頼されたので手持ちの物を分解してフルオーバーホールします。ボールスプライン部もこの後分解しています。特に古いドラシャのクロスジョイントは錆固まってハンマーで叩いたくらいでは抜けずプレスを使うのですがそれとて治具が無いと本体側が変形してオシャカになりかねません。ここはかなり手順と工夫が必要になります。
全分解してきれいにしてアッシーに入ります。日産パッケージのクロスジョイントを使用します。
プロペラシャフトも手持ちの物を全分解、クロスジョイントはこちらの方が小さく抜き取りにはドラシャ以上に慎重さとテクニックが必要となります。
そしてアッシー。日産パッケージはクロスジョイントです。
ドライブシャフトとプロペラシャフトのアッシーが出来ました。プロペラシャフトの上の数字はボールスプラインが伸びた時と縮んだ時のフランジ間寸法です。
これでミッションからプロペラシャフト、ドライブシャフトまでの駆動系のレストアが完了したことになります。あとデフを手入れすれば完璧ですね。
2020年8月3日
71BコンパチB’
β19ー240クロスワーナー
今や貴重で憧れの240クロス、そのものも球数が少なくなってきましたが、今回その240クロスをワーナー化するバージョンで現代化して復刻します。
普段乗りで2400ccでスポーティーに走りたいとなると、サーキット主眼に作られたスポーツクロスでは走りにくいところも出てきますが、この日産が純正で準備した240クロスなら安心だし、ビンテージ感もあります。
ポルシェを分解してワーナー化に備えます。
このあたりのやり方はコンパチミッションでほとんど共通のやり方となります。
1-4速まで組み付け完成
5速裏はスラストニードル仕様に改造
5速は今回は0.86ギヤ比でポルシェシンクロを残していきます。0.86でより日産純正に近い仕様で走ることができます。
シフトフォークも組み、ギヤ部はほとんど完成です。
精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.38 0.17 0.18---0.05
バックラッシュ
0.11 0.15 0.06---0.15
良い値です。
71Bフランジタイプのミッションケースに組み込みます。外観からはポルシェシンクロっぽく見える。が、中身は240クロスのしかも1-4速はシフトの軽いワーナーシンクロとなります。
このタイプだとプロペラシャフトが純正のフランジ結合タイプそのままで良いので今ではなかなか見つからない差し込みタイプのプロペラシャフトを用意する必要がありません。
2020年9月18日
お得意様の滋賀のショップさんから71Bで5速がはじかれる不具合を解消して最小限オーバーホールしてほしいとのご依頼です。
5速の問題とのことで当方で編み出した技、5速裏ニードル 仕様に改造して万全を期します。そのためもあるのですが、ミッション全体に何らかの異物・金属片などが発生していないかチェックする必要もあり(ギヤに挟まると大変なことになりかねない)全バラしてゆきます。手順ですのでボールベアリング・シンクロ・各部シールは交換します。
5速ギヤ部分ですが、特に見たところ大きな不具合は見当たりません。5速がはじかれる理由はギヤやシンクロ以外の所に原因がある様です。が、いろいろ調べてもなかなか原因らしきものが見当たりません。
ギヤ類やシフト関係は消耗も少なく程度としては良好です。まだいろいろチェックしなければなりません。
5速裏スラスト
仕様に変更、これにより71Bで多発する5速ギヤの焼き付きやメインシャフト締め込みM38ナットの緩みが大幅に改善されます。こうすることで故障の種をひとつづつ消してゆきます。
ギヤ部は組み付け完了
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
EP 0.32 0.06 0.35---0.20
BL 0.08 0.11 0.10---0.11
3速のエンドプレイが少し大きめですが問題ないです。(規格0.2まで)
バックラッシュは良い値でそろっています。
問題のシフトストロークのチェック
この時点でも特に不具合は見えなく、良好です。
ここの部分にはギヤの2重噛み合いを防止する機構とか、ギヤシフトのストロークを規制する装置が組み込まれています。こういうところが破損した場合もシフトがうまくできなくなります。
シフトコントロール部分・ストライキングロッドやストライキングレバーはシフト不具合に関して直接影響しますのでこちらも全バラしてやり直します。
そして今回の不具合の直接的原因が分かりました。この部分のシフトコントロール系の干渉が有る様です。今回はこのようにストライキングブロックのシフトレバー取り付け支点を増設することで不具合回避するように改造しました。これで回転試験機でチェックして問題が無く、又問題の再現テストもできましたので問題は解消できると思います。