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240クロスのオーバーホールからコンパチ化改造まで
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71Bのケースの中身のポルシェシンクロ・ギヤ類を71Bの最終仕様のワーナーシンクロで組みなおすのがβバージョンで、特徴はシンプルで有る事と、もちろんプロペラシャフトがスプライン差し込みがベストですが、スプライン差し込みペラをお持ちでない場合はフランジ結合のままでも組める事。
240クロスは全てポルシェシンクロですがこれをワーナー化するバージョンを開発
71BコンパチB’ 240クロス プロペラシャフトはフランジでもスプラインでも製作が可能
2021年6月1日
71BコンパチB’ β24
γバージョンをご依頼くださったあの希少車をお持ちの方から、今回は240ZG用ミッションをオーダーいただきました。支給されてきたミッションですが71Bのかなり後期版で排気ガス対策用のセンサーデバイスが通常より2個追加されているのが特徴です。このミッションは排ガス対策でエンジン出力が落ちたことをリカバリーするために一次減速=4速メインインプットギヤをローギヤッド化している場合が多く、この場合のギヤ比は1速が3.5から始まるギヤ比で、これはファミリーカーやセダン車向けとギヤ比と言えますので、これをスポーツカーであるS30Zに使うのは避けたいところです。
ミッションを取り出してきました。見たところ大きな破損などは見られません。形式としては1-4速がワーナー・5速がポルシェというパターンです。
この時点でのギヤ精度を確認してみます。
1ST 2ND 3RD 5TH
バックラッシュ
0.43 0.22 0.37 ーーー 0.45
エンドプレイ
0.08 0.34 0.17 ーーー0.05
あちこち大きすぎたり、逆に狭すぎたりともうガタガタの状態です。特に5速のエンドプレイ 0.45とはどうしたことでしょう。通常は0.1ぐらいです。
メインインプットギヤ、最初に述べましたようにギヤの歯数を数えますとやはり21歯でローギヤッドです。ハイギヤッドは22歯でなければなりません。
同じくカウンター側、歯数は32歯ですが、ここは31歯が欲しいところです。 これですと1速が3.5から始まるローギヤ比ミッションです。
組み付けに入っています。今回の最大の特徴は支給された71B中期型のワーナー差し込みプロペラシャフト仕様から、71Bの初期のフランジ結合プロペラシャフトタイプに変更するというもので、その場合この時点でメインシャフトを交換しておくことが必要です。こうするとプロペラシャフトは240ZGのオリジナルのフランジ結合なので外観からは変更が無いように見えるし、もちろんプロペラシャフトもそのまま流用で行けます。が、中身はワーナーシンクロとなるのでシフトが楽になるということになります。
フロント側1速から4速まで組みました。71Bの中期ワーナーはハブスリーブの厚みが厚いのが特徴です。71Cではギヤ歯を厚くして強度を増していますがこの71Bの厚いハブスリーブを薄くすることでその増厚分を稼ぎ出しています。
メインインプット=4速=一次減速は22-31歯のハイギヤードを探し出してきて入れ替えました。
分解前の測定でエンドプレイやバックラッシュがガタガタであることが分かっていますので、ボールベアリングとニードルベアリングは全て新品に交換していきます。
これが22-31ギヤ歯のメインインプットです。今や貴重なこのギヤセット、もちろん中古しかありませんが価格は25000円となります。
リヤ側 5速-バックギヤ組も組んでいます。
5速はポルシェシンクロをそのまま残しています。シンクロの痛みはごく僅かでした。私は5速もワーナー化するバージョンも作りますがその場合やはりかなり改造費がかさみます。
ギヤ精度
1st 2nd 3rd 5th
エンドプレイ
0.34 0.18 0.22ーーー0.27
バックラッシュ
0.10 0.15 0.12ーーー0.12
オーバーホール前のガタガタの状態から、オーバーホールで良い値になりました。特にバックラッシュはきれいに揃ってきています。
シフトロッドとシフトフォークを組んでいます。全体的には71Bの中終期の71Bとしてはほぼ最終形ともいえる様子となっています。
回転試験機で回転試験とシフト感のチェックを実施しています。どちらも問題なく良い状態と思います。
今回の特徴であるFL結合アウトプットです。これで純正のプロペラシャフトとセットできます。FL結合ミッションはほとんどがポルシェシンクロですが、このミッションはこの外観状態で1速~4速がワーナーという使いやすいミッションになっています。
2022年1月26日
71BコンパチB’ β25ーw 240クロス
今回は普通のオーバーホールなんですが支給されてくるものがレアものとなっています。
画像がオーバーホール対象のミッションで、タイプ的には71Bの最終のもう一つ前ぐらいのバージョンの仕様でフルワーナーシンクロとなっています。
全部分解して全ベアリングを新しくしてゆきます。
メインシャフトは曲がりヤカジリが無いか確認してゆきます。
センタープレートはアルミ製となっており、軽量化を考慮したミッションであることがわかります。
フロント側を組みました。
ハブがこの当時のものであることがよくわかりますが、71Cよりもハブスリーブの厚みが厚くなっています。71Cはこのハブスリーブの厚みを薄くしてその分ギヤを厚くして強化していることになります。このハブの3か所のシンクロキーは金属ブロック+スプリングでできており、しっかりお金のかかった作りとなっています。
メインインプットを取り付けました。レシオとしては22-31のハイギヤードスポーツ向けのギヤ比です。
続いてリヤ側、5速は24-45の0.81ギヤ比となっています。画像に見えるように5速の裏にスラストニードルを構築するオプションを施行していますし、M38ナットの緩み防止サイドロック加工も実施しています。
ギヤ部分は組付け完了
ギヤ精度は
1st 2nd 3rd 5th
エンドプレイ
0.38 0.16 0.20 ー-- 0.22
バックラッシュ
0.08 0.24 0.26 ー-- 0.10
2速と3速のバックラッシュが規格(0.20まで)を少し超えていますが、これはギヤを交換しないと直せないのですが、今回は240クロスなので交換が無理でしたのでこのままいきます。エンドプレイも全体的に大きめではありますが問題ないと思います。
シフトフォーク関連を組んでいきます。実はここで大きな見落としをしていたのですが、気が付かなくて結局ミッションケースまで全部組んでからやり直しとなってしまいました。シフトロッドの一番下のバックランプ作動カムがミッションケースとアンマッチであることを見落としていたのです。ミッションもミッションケースも71Bだからそのまま組めばOKと気にしなかったのがいけませんでした。油断でした。
何とかギヤ側を組みなおしてやっとミッションケースへの最終組み込みですがこのミッションケースがレアものとなります。ケンメリGTR2分割用純正ケースです。最近、復刻版がありますので形的には入手可能なものではありますが、やはり純正当時物となるとレア度が高いです。
ケンメリGTR2分割純正フロントベルハウジングはこの位置にこの鋳出し文字があるのが特徴です。
リヤエクステンションもいつもの通りこれらを分解してオイルシールを交換します。このストライキングロッドの抜き取りは簡単ではなく、プロショップでもギブアップする場合が多いと思います。(よくここを外してくれというご依頼があります)
ミッションケースへの組付けが完了して、私の自作の回転試験機で試験してゆきます。これでシフト感は元より回転抵抗、オイル漏れ、振動などの検査項目をチェックしてゆきます。
2022年2月11日
71BコンパチB’ β26ーW 240クロス
このところ240クロスのβバージョンが続いています。240クロスは伝統の純正クロスで普通のツーリングでは非常に乗りやすいギヤ比、オールマイティーな感じです。しかも純正ですので部品供給や価格もありがたい設定です。
しかし、ほとんどの240クロスはポルシェシンクロなのでミッションの取り扱いとしてはデリケートなところがあります。そこで、このポルシェシンクロをワーナーシンクロに改造するのがβーW240クロスです。画像は240クロスの主要な構成パーツですが下側の長いカウンターギヤの一番右のギヤが16歯であることが240クロスの大きな特徴です。(通常は14歯)
私は純正240クロス ポルシェシンクロのドナーギヤはかなりの数在庫しておりますので、ミッションケースを支給していただければそのまま240クロスのワーナー(ポルシェでも)組み換えすることが可能ですのでお申しつけください。この時、プロペラシャフトはスプライン差し替え式でも、純正フランジ結合式でもどちらもご希望で組立てを選ぶことができます。
1速、2速ギヤです。もと元々ポルシェシンクロでしたがワーナーシンクロに入れ替えています。上のビニール袋に入れているもが他のパーツも含めてポルシェシンクロ組からワーナー組にすることで発生する取り外したパーツです。
ワーナーのハブ・スリーブセットです。これもポルシェからワーナー化するうえでどうしても必要なパーツとなります。2個必要ですね。
3速まで組みました。
4速メインインプットまで
一番右が4速=メインインプットでエンジンにつながる部分です。
このメインインプットについて日産71系で大きく分けて2種類のギヤ比がありこれが1次減速比となりますが、スポーツ系の22歯とセダン系の21歯となりますが、S30Zのようなスポーツ系はもちろん22歯を選択したいですね。これがミッションの外観からはわからないので素材となるミッションを選ぶ際に困ることになります。
リヤ側 5速ーバックの構成です。
今回は5速ポルシェの選択なので、ポルシェで組んでいます。5速もワーナー化することは可能ですが改造費用が跳ね上がります(ミッションのほとんど半分を新たに構築する改造となる)このポルシェはほとんど摩耗が見られないので、これでシフトに大きく悪影響が出ることはないと思います。
5速の裏をニードルベアリングで受ける改造は効果がものすごく大きいので(5速のスラスト焼けが撲滅できる=5速ギヤ抜けがなくなる、ミッション回転がスムーズになりシンクロが効きやすくなる)ほとんどの場合実施します。
ギヤ精度の確認
左側のプレートは特製ジグとなります。
バックラッシュ
0.38 0.13 0.25 ー-- 0.05
エンドプレイ
0.16 0.19 0.16 ー-- 0.14
問題のない値です。
特にバックラッシュはきれいに揃っていて
いい感じです。ギヤが摩耗してくるとこれがばらつきが出てくると思います。
ギヤ部の組み込みは完了
シフトフォーク類を組付け
1-2、3-4のシフトフォークは71Bの最終型アルミ+スライドブロックのタイプに変更しています。
ミッションケースに組み込む準備です。
シフトストライキングロッドを抜いて内部にあるオーリングを交換してゆきます。
このシフトブロックの奥のほうにオイルシールが打ち込まれているのですが、純正のリップシールタイプはすぐに摩耗するのでダメです。その結果、ウサギの耳がついているシフトブロックの中がミッションオイルでバシャバシャになります。年式の新しいものほどリップシールである場合が多いです。そもそもリップシールタイプのオイルシールは回転軸に用いるものであるのは常識ですが、なぜこのスライドストロークする部分にこれを使ったのかN社さんの設計理由が理解できません。私はこの部分はすべてオーリング+金属冠で打ち込みタイプに交換してしまいます。右の奥のほうにそれぞれのシールが見えていますが、金色のがこれから打ち込む金属冠タイプです。
ケースに組んで回転試験機で確認しています。
今回はウェットブラストしていないので外観はそれなりです。試験結果としていずれも問題ないです。
βバージョンの良いところは
・シンプルで軽量であること
となります。それで回転抵抗はα、Ωバージョンより少し低くなり、効率が良くなります。
純正240クロスのギヤ比は高速主体・激しい坂道が少なくなった(国道などは国の方針で坂道勾配の大きさが規制されていると思います)道路事情ですので、ノーマルエンジンで最適のミッションギヤ比となっているのではないでしょうか。純正ノーマルでは今の道路事情では1速に入れてすぐに2速に入れなければならないほどローギヤが低いと感じると思いますが240クロスにすることでそこがすごく気持ちよく改善できると思います。