71BコンパチC α53~58・60


2016.7.10

71BショートコンパチC α53

今回鹿児島のYさんから〇〇ディーラー経由でこれを依頼されました。HR30用の71Bショートです。前側はロングと全く同じ様ですが、リヤエクステはもちろん違います。

 これを中身71C 2-3速ダブルシンクロ厚歯ギヤに組み替えていきます。

 

ミッション外したHR30 L20ターボ車の保管の都合上納期マストで約束しました。

 

スピードメーター取り出し位置がこんなところにあります。

 

細かいところですがこの部分ドレンの締め付け穴が8角形に舐めてしまっています。ここはテーパーネジなので強く締めるとどんどんしまってしまい、緩める時にこのように緩まなくなります。口で説明が難しいですが1回ギュッと締めればOKです。ギューーーはだめです。

 

皆さんならこれをどうやって外しますか?

真ん中をドリルで揉もうにも形状が不安定で固定できないのでドリルが食いませんし、下手するとケース側をつぶします。

中身は過渡期の71Bで、1-2速は薄歯ギヤの大径シングルシンクロ、3-4速は薄歯ギヤの小径シングルシンクロ

 

程度としては悪くないですが、コンパチの場合これらをすべて71Cの最終バージョン1-4速厚歯、1-4速大径シンクロスリーブ、2-3速ダブルコーンシンクロにします。

 

ちなみにこのカウンターフロントのベアリングは71Cと同じ一番でかいサイズのケースで組んでありました。フロントケースはケースサイドにNMCA鋳出しのあるオーストラリア製ですね。

 

 

このM38ナットすでに少し緩んでいて手で軽くカタカタ動く状態で、加締めがあるのでかろうじて止まっている状態でした。ネジは最終バージョンの左ネジでした。

 

このナットの前にスピードメーターギヤがあるのがすごく違いますね。そのためにギヤがエンジニアリングプラスチック製から鉄製に代わっています。

フロント側3速は小径シングルワーナーシンクロです。機能的には71B初期ワーナーと同じと思います。

組み付けに入ります。

左側2速右側1速、中央部ハブとスリーブすべて元あったのとは異なる厚歯仕様の71Cと交換してゆきます。

これはカウンターですが上が71C、したが今までついていた71B。歯の厚みが全く異なることに気が付きます。

1-2速まで組み付け

3速は新品箱入りの71C

ここは今までの小径シングルから大径ダブルシンクロになります。当然ハブもスリーブも変わります。

4速いうかメインインプットですがやはり上が71Cの大径シングル。下は今までの小径シングル。

 

そしてR30はこのメインインプットの一次減速比が1速でいうと3.59というだるい設定ですが、3.32と少しハイギヤードとなり、走りやすくなり、全体的にハイギヤードとなりますね。

フロント側を組みましたが、ここで下側のカウンターの一番前にシザースギヤという薄いギヤが追加されています。これは71Cにはすべてついているアイドリング時のギヤ打音(チャタリング音)を提言する機構ですので、そのまま移植して行きます。

次にリヤがわですが71Bは5速ギヤ比が0.86とこれも4速と近いギヤ比で高速でありがたみが無い設定ですが、オーナーの依頼で0.75にすることになりましたので変更してゆきます。5速はメーカーからセット交換の指定になっていますので(選択採用)5速メインとカウンターセットで交換してゆきます。横にあるのが5速セットでこの中からちょうど合うものを探します。同じギヤ比でもギヤ間ピッチが微妙に違うのでやってみないとわかりませんし、それが各ギヤのバックラッシュに大きく影響します。おなじ71Cのなかでも生産時期や車種により微妙に異なります。

 

5速も決まったのでこのM38ナットを固定してゆきますが、いつものように私の編み出した技サイドロックボルトで緩みを撲滅します。メーカーでもやっていない方式です。

 

 

3-4シフトフォークは大径スリーブに対応するため新品を準備しました。

シフトフォークも取り付けてほぼギヤ組が完成です。シフトロッド類はすべてショート用でないと組めないのでかなり改造が必要でした。ロングならあまり苦労しないんですが。

ショートケースに組んで完成です

今回このショートミッションのづトライキングロッドの部分が冶具が合わず分解できませんでした。ロングと同じような冶具を作ればいいんですが、それなりの費用が掛かるので断念しました。

 

 

8月14日に完成して九州のさるディーラーへ送ったのですが、クラッチが切れない現象が出ているということで何回かやり取りしました。現象としてはアイドリング中にクラッチを踏んでシフトしようとしてもどのギヤにもシフトできない、エンジンを止めてやるとどのギヤにも入るというものです。

 今回はミッションケースおろしの現物作業ですので、車両はおろした時のままになっていますので、そのまますんなりつくはずでしたので心配しました。クラッチのエア抜きを何度かやり直したようですがダメで、クラッチディスクの変形を疑ってメインインプットとのスプラインスライド状態確認して問題なし、クラッチベアリングやビボット・クラッチフォークもチェックして問題なし。以前クラッチフォークに亀裂が入っていたというのもありました。結局クラッチカバーを交換して問題解消したようです。クラッチカバーはおろした時のまんまなのになぜだろ。まあ、直ったということで安心しました。

 オーナーさんから本日22日連絡が来ました。

 

こんにちは、Yです。
今回の71BショートコンパチC α53 へのオーバーホールありがとうございました。
昨日ようやく車への搭載が完了しまして少し乗りましたが今のところ問題はありません。
クラッチが切れない症状があり搭載するのに予定より数日遅れやきもきされたことと思います。原因がクラッチカバーにあった事が判明し何とか解決しました。
ストレス無く気持ちよく加速出来るようになりうれしい限りです。
大変お世話になりありがとうございました。


201年10月1日

 

時間的に前後してしまいますがα54についてミッション交換後下取りとして現品が送られてきました。オイル抜くときに鉄片が出てきたというこのミッションですが、分解してみるとこのとおり。

 

カウンター後端のベアリングがはじけています。このまま乗り続けていればやがてカウンターの後ろ側がねじ切れていたことでしょう。実際にそのようになっているものを何例かみました。

 

全体的には何ともないように見える子のギヤ部はバックラッシュ・エンドプレイともに測定不能の状態でした。あちこち鉄粉が入ってクリアランスが出ていない状態です。

例えばこのメインインプット、鉄片が分かりやすくはまり込んでいますが、これでは結構な音振動が出たでしょうし、ギヤへのダメージもあります。このようにはまり込むと回転しても取れないくらいになっています。

3速にもこのような謎のダコンが。

 

以上のような状態でしたが、早く異常に気ついてオイル抜いてチェックしたオーナー様は正解でした。このまま乗り続けていたらもっとひどい破損につながっていたと思います。

2016年9月11日

71BコンパチC α54

 

茨城のGC10乗りのKさんからミッションが壊れてしまったのでということで、αで依頼されました。

 

ちょうど次のα54を作りかけていたところですぐに切り替えて取り掛かります。

 

今現在走れない状態ということですので急いでやります。やり方としてはいつもと同じです。

3速とメインインプット。

 

Ωバージョンでは無いのでそのまま行きます。

フロント側を組みました。

ギヤアッシー完成ギヤ精度     EP0.45 0.12 0.19 0.09      BR0.07 0.07 0.09 0.07

 

良い値です。

回転試験も良好でした。振動が少なかったです。

ハウジング内ピッカピカですね。こんなにきれいなのはなかなか無いです。


2016年10月13日

 

71BコンパチC α55

今回は55機目となる熟成のコンパチCを作ります。

私として考えられる現状で最も究極のやり方として、この純正新品のメインシャフトを使っていきます。なんといってもこれが基礎の要ですから。

 

違うものを流用しても出来ますが軸方向のクリアランスの値が不確実になる場合が出てきます。

作り方としてはもう何回もやって記録しているので現状のギヤ類の状態のみ観察できるようにまとめて記録します。

 

1-2速関係

3速

メインインプット

5速ーバック

 

ギヤ類のシンクロ舳先(ドッグティース)は全部良好な状態でした。

緩みやすいM38ナットは私の編み出した技サイドロックボルトでしっかりと固定、加締めも併用です。

 

ギヤ部が完成して精度測定しています。

        1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ 0.35 0.12 0.12 --- 0.25

バックラッシュ0.11 0.25 0.12 --- 0.13

 

ほぼ理想値です。

 

シフトフォーク組み付け

リヤエクステもいつもの通り完全分解してリペア

完成です


2017年2月17日

71BコンパチC α57

富山のSさんから依頼されました。

やり方としては今までのと同じですので特記のみ記します。

・71Cとして最終のバックシンクロ付

・ケースはS130タイプバックチェック付き

・シフトフォーク・フロントカバーともにアルミ

 

 

 

 

 

ギヤ精度    1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ 0.37 0.25 0.12 ーーー 0.05

バックラッシュ0.14 0.19 0.16 --- 0.03

 


2017年2月28日

71BコンパチC α58

 

今回はドナーとなる71Bを支給されましたので使っていきますが、ケース自体は

きれいな方ですが結構問題があります。

 

でも何とか補修して中身71Cのコンパチαバージョン仕上げます。

 

問題はこの画像中央部のバックシフト検出スイッチの取り付け穴ですがねじがズルむけていて、そこに無理やりバックスイッチを固定して黒い接着剤で固めてあるだけです。

 

あとクラッチオペレートのボルト穴もへんなヘリサートだったのでやり直しました。

アルミは本来はA2017以上のジェラルミンでないとネジ強度は保てませんので、あまり強く締めるのはよろしくありません。完璧にしたいならすべてのねじ穴をヘリサートした方が良いと思います。

 

完全にズル剝けています。良く抜けないでいたものですが、黒い接着剤みたいなものがかなり強度があるようです。

ここは肉厚が無いのでヘリサートが難しかったですが何度かやりなおして修復。でもあまり強く締めすぎないでください。


やり方はいつもの通りで、メインシャフトは新品のパーツを奢ります。

ギヤ部組み立て完了。

5速はオーナーの依頼で71C標準の0.75ギヤ比から0.83ギヤ比に変更してゆきます。L型で9000rpmまで回すとのこと。

ギヤ精度

      1ST   2ND  3RD     4TH

EP 0.28  0.15  0.18 --- 0.24

BR 0.14  0.25  0.17 --- 0,07

まずまずの値です。

 

リヤエクステンションのこの部分にオーリングがあるものと無いものとあります。ある場合はもちろん交換してゆきます。

ストライキングロッドのこの部分には必ずオイルシールが有りますので交換です。これをやらないとリアエクステ周りがオイルでべとべとになります。

完成です。

 

簡易試験機につけて1500RPMまで回して各シフトを確認します。

 

いい感じです。


2017年3月19日

71BコンパチC α60(α59は次のページに飛ぶ)

 

やり方はいつもと同じですが、今回素材となる71Cのカウンターの精度が振れ0.025と大きかったので別途0.01品2と交換します。

あと3速についてスラスト面にかじり初期の状態が見られたので念のため3速ギヤは箱入り新品に交換します。

        1ST  2ND  3RD     5TH

エンドプレイ 0.32 0.25 0.21 --- 0.15

バックラッシュ0.09 0.22 0.11 --- 0.12

 

2速のバックラッシュがすこし大き目ですが問題ないと思います。