S20エンジン用 71A3分割 γ13~γ17 (γ16は空飛ぶZ432 γ15は欠番)
Z432やハコスカGTRのS20エンジンは例外を除きこのミッションが必然です。
私はこの3分割ミッションの弱点を徹底的に撲滅するγスペシャルシリーズを追求します。
3分割ミッションであればL型でもSP、SR、もちろん同様に可能です。
すでにγ10は路上を走り始めています。こちら
2016年7月29日
S2071A3分割 γ13スペシャル
東京のWさんが持参してきたS20用71A3分割現物をばらしています。これ以前の履歴はこちら
ここのベアリングですが手で抜けてしまいました。通常は特殊なプーラーがないと引き抜けません。(私はここの専用特殊プーラーを自作していますので71A・71B・71CのR32・S13とすべてに対応できるプーラーとしています。)
今回は手間が省けましたがベアリングがダメなのかシャフトが細いの検証しなければなりません。
カウンター側のM14ネジを緩めたらスプリングワッシャーが真っ二つになって落ちてきました。
5速スラスト面はわずかに焼けが見られますがまあ問題ない範囲です。
インプットシャフトのシンクロリングの蓋、画像で小さな穴が2個あるC型のプレートですが外周に削れた跡が見られます。これはかなり発生する不具合でM38メインシャフト締め込みナットが緩んだためにメインシャフトが全体に前に移動してきてここにハブが当るために発生し、エンジンブレーキなどの時にガーなどの音が出ていたと思います。ただ今回M38が緩んでいなかったので、どの時点でなったのかは不明です。
これは代表で1速のシンクロリングの様子ですがどうも違和感があるのです。全部のギヤでそうです。
その一つが色ですが鉄の地肌のようなグレーの色合いで表面もすべすべしています。私が今まで見た新品はもっと少し褐色で表面も溶射の肌で凸凹していましたが、明らかに違うものだと思います。
もう一つが表面のテーパーの付き方ですが全周が均一ではなく傾いているように見えます。
社外品とかなのかもしれません。
手でスリーブ押し込んでみると純正新品よりかなり緩かったです。
これは3速ですが右の新品と比較すると違いが判ると思います。
ところどころにクレーター状のへこみがあることも今回の特徴です。
テーパー面も傾いています。
少し飛びますが分解前の現状のギヤ精度についてチェックしておきます。
エンドプレイ 0.30 0.35 0.50 --- 0.15
バックラッシュ 0.07 0.10 0.06 --- 0.08
2速・3速のエンドプレイが大きめですが問題ない範囲です。
バックラッシュは良好ですし、シンクロ舳先もすべてとがっていて
まだそんなに走行距離が出ていないか、または途中でギヤ交換したか
またはシフト操作が秀逸だったかのどれかです。
メインシャフトは問題なし。
1速 片側のみブレーキバンド仕様 通常です。
2速 良い状態です
ハブスリーブ スリーブはWPC処理
こんな感じで組んでいきます。この時点でエンドプレイがチェックできるのですが、よく見ておかないとギヤ焼き付きの原因となります。
いつものアダプタープレート
ボルトはヘキサゴンに
ベアリングはセミシールド
フロント側組みました。
私はこれを組む場合、全体をプレスに入れて圧入します。メインシャフトの先端をハンマーで思いっきりたたいて打ち込む人はいないと思いますが、それをやると大事なメインシャフトの接続部が変形しますね。
このあと3速を組みハブスリーブ組んでから、このメインインプットを組みますがベアリング打ち込み面に何やら打ち傷とフロントシールとの摩耗面が2筋あります。問題ないレベルなのでこのままいきます。
フロント側組みました。
5速シンクロですがこれは新品が入手困難なので現品を裏表反転で行きます。程度は悪くないです。
5速のカラーですがこんな風に摩耗しています。
今回は交換します。
5速裏ニードルベアリングにてスラストを受けれるように改造してゆきます。5速にとっては大変な差だと思います。
そして私の編み出した技、サイドロックボルト、シングル加締め式ナット仕様にしてゆきます。分解時の画像と比べると全く異なることが分かると思います。
シフトフォークは下側の3点支持フォークに交換してゆきます。どう見てもこちらのほうが平行に押せると思います。
シフトフォークも組んでギヤ部分が完成。
精度は
EP 0.05 0.13 0.18 --- 0.14
BR 0.09 0.08 0.12 --- 0.06
1速のエンドプレイが少なめですが大丈夫です。
バックラッシュはほぼ理想的。
ケースに組んでいきますが、このリヤエクステンションの合わせ面がかなり手荒く扱われています。分解するときに合わせ面をドライバーなどでコジルためにこうなっているものがあります。
私はこの面には絶対に工具は入れません。プーラーや慣性力を利用して抜いています。
今回は仕方ないのでこちらの面だけは液体パッキンを塗って組みます。
そして今回新たにこの部分にひと工夫。
シフトリンケージのこの部分、オイル漏れが発生してリヤ周りがオイルだらけとなる場合がありますが、ここのオーリングをシングルからダブルにします。
リンケージのスタビライザー部分も分解してプランジャーのオーリングを一回り大きなものに変更。
完成です。
71A3分割純正クロスミッション
γ13スペシャル
回転試験機で試験してチェック済み。
2016年12月15日
時間的に前後しますが北海道のIさんのγ14の下取りミッションをばらしてみた。
5速が入らなくなったというこのミッションですが、オイルが黒くて交換があまりされていなかったかもしれません。
分解してゆくとすぐにこのお決まりのM38の緩みが見られました。回り止め舌付きワッシャーがあるので完全に緩むところまでは行っていませんが。
そして、2重ナットの後ろ側が無意味に加締めタイプのナットに交換されています。ナットが無かったので流用したのでしょう。
お決まりの5速スラストワッシャーの焼き付きです。もうロック寸前まで行っています。
当然5速のスラスト面もこの通り。
そして5速反対側のハブ受け面もこの通り。やはり焼き付き寸前です。このようになると5速がロック気味になりますので他のギヤへ入れようとしたときにシンクロがはじかれたり、5速そのものがシンクロ作用ができなく入らなくなります。
もう何例このようなものを見たでしょう。
やはり71AではM38ナットのゆるみは鬼門であり、これが緩むとギヤスラストが大きくなりアクセルONOFFのたびに叩かれてかじりやすくなるのだと思います。私がこの対策として5速スラストニードル受けを構築したのには効果と意味があると実感できます。
これは2速のシンクロですがここまでひどく摩擦面が剝けたものは見たことがありません。
全体的にはオイルの質が悪かったか、交換頻度が足りなかったのではないかと思われます。
2016年8月9日
71A3分割 γ14
γ14を追加製作していきます。
このミッションはまだ行き先が決まっていませんので、必要な方はご連絡ください。(時間前後しますが上記事の北海道 Iさんがお買い上げしました)
素材を分解しましたが画像の様にやはりシンクロはずる向け状態ですが、ギヤはしっかりしていて問題ないです。
またいつもの通りアダプタープレートからシールドベアリング・ヘキサボルトで組んでいきます。
一速ギヤ
これらの画像は特にシンクロ舳先(ドッグティース)の状態を把握するために残しています。
シンクロCリング・ブレーキバンド・ニードルベアリングともに新品に交換します。
2速ギヤ
3速ギヤ
メインインプット
重要なベアリングですのでもちろん交換
5速シンクロは新品入手は難しいので、程度を見て反転して使うか、手持ちのスペアから部品どりして補修します。今回は程度良かったので反転して再使用です。
そして5速の裏のスラスト受けは焼き付きやすい部分ですが、ここは今回の目玉スラストニードルベアリングを仕込んで対策します。
また、巨大なメインシャフトを固定するM38ナットをシングルの加締め式、さらに私の編み出した技、サイドロックボルトで緩み防止を万全にします。
シフトフォークについては強度不足と形状不備を補正するため、このような3点支持=又の中央にもスリーブ受け面があるタイプに変更してゆきます。今回は1-2速フォークについて対策しました。
ギヤ部が完成
1-2速スリーブはwpc処理品です。
ギヤ精度
エンドプレイ 0.16 0.17 0.16 --- 0.05
バックラッシュ0.12 0.11 0.21 --- 0.07
ほぼ良い値です。
こんな感じでケースに組んでいきます。
作業しやすい冶具が必要で大事ですね。
リヤエクステ部分、シフトリンケージのフルオーバーホール。
ここはオイル漏れするとリヤ周りがオイルだらけになります。特に上り坂のフル加速時はミッションオイルがほとんどこの部分に満杯になりますので漏れやすいですね。
この部分のオーリング2個交換
シフトを中立に保つ役目のプランジャーもオイル漏れの定番部分ですが、オーリングを少し太いものに変えていきます。
上が交換後、 したが今までの使用品ですがオーリングが既に硬化して四角断面になっています。
そしてこの部分、ストライキングロッドが出入りする部分のオーリングですが画像の通り2重にしてゆきます。
完成しました。
簡易試験機で回転・振動・シフト感・オイル漏れチェックしています。
リヤエクステの上部のピンクのチューブは新たに考え出したエア抜きパーツです。チューブには小さな穴があけてありますので取り外さないでください。
クラッチフォークカバーのゴムパーツは流用品で新品です。
丸いゴムプラグは新品
シフトリンケージはZ432用に組んでいますがハコスカGTRの場合は黒いレバーを前後反転することで対応できます。
訂正:上記記述は全くの間違いでした。ハコスカ系のシフトリンケージは寸法が異なっており、反転では対応することは不可能です。それぞれのパーツを使う必要があります。
このミッション一式につきましては販売いたします。
通常価格は488000円です。
直接ご注文の場合は5万円引きの438000円でお譲りします。
ご注文は販売のページのオーダーフォーム こちら からどうぞ。
または メール e-za@vintagecraft-e-za.com から
S20用3分割下取りありの場合、通常の使用品で130000円で下取ります。
下取りは後からでも構いません。
ご注文が入らなかった場合は3日後ぐらいからオークションに出品しますので
そちらからご検討ください。
2016年12月1日
71A3分割 γ17スペシャル
愛知のGTRユーザーからS20用71Aミッションのお決まりの不具合 5速NGの破損解消のため、γシリーズでご依頼いただきました。
やり方は今までと同じようですのでパーツのみ記録します。
1速・2速関連
3速・4速メイン人プット関連のパーツたち
5速・バック
オプションで5速破損対策のスラストニードル機構の構築。もちろん純正でも存在しません。
ナットはサイドロック加工のシングルナットで加締め溝タイプに変更で緩みを撲滅します。
組み付け完了
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ 0.10 0.16 0.05 ーーー 0.05
バックラッシュ0.10 0.07 0.05 ーーー 0.15
完成です
e-zanaraizerで回転試験して感触は良かったです。
GTRのS20エンジンで頑張ってミッションして欲しいと思います。
2016年12月8日
今回は1日乗せ換え日帰りコースですので、愛知からAさんが奥様と御一緒に来ました。
ハコスカ2枚のGTRです。ほとんどノーマル純正です。20年前から乗られていたとのこと。
ちょっと寄り道でこのリヤスタビライザー、結構見かけますがよくできています。
エンジンもきれい
ミッション降ろしてゆきますが、このミッションメンバーは以前削られたようです。現状で純正でも問題ないようなので純正に戻したいところです。ここまで削ると強度の心配があります。
フライホイールダメっぽいです。
今回メニューには入っていないのでこのままいくしかありません。すぐにどうこうはないと思いますが、次の機会には交換予定した方が良さそうです。
そしてクラッチカバーも微妙なところです。このタイプのカバーのプレッシャープレートはほとんどがテーパーがついています。
ミッションがクランクに刺さるところのパイロットベアリング金属ケース部が打痕だらけでニードルが回っていない状態でした。打ち込み時に変な打ち込みをしていたようです。
組み付けして最終段階。ここまでサクサクときました。
だがここでやっちまったー。
シフトレバーが合わない。すごく前に行ってしまって1速3速はコンソールにシフトレバーが当たってしまいます。
今回は、Z432のミッションの画像のシフトレバーがハコスカ用とほとんど同じなので取りつくところを前後反転すれば行けると思ったのですが、よく見ると角度がかなり違います。
ミッションのギヤ比は一緒なのでここさえ合えば行けると思っていたのですが勘違いでした。というかこの部分の部品が共通で無く2種類あることに気が付いていませんでした。
黒い部分のみハコスカ用に組み替えれば何とかなるかもと思ったのですが、画像で示すピッチまでが異なることが判明しました。
GTRは50mm
z432は45mm
これで完全にアウトです。あきらめて
ミッションもう一回降ろします。
オーナーさんには今回はいったん電車で戻ってもらいます。
せっかくミッション降ろすのですから痛んでいたフライホイールも交換しようとオーナー様から助け舟を出されましたので、すぐに新品入手してフライホイール交換です。これで安心、結果オーライ的な感じですが。取り付け後、失われていた回り止めワッシャーも復元して、回してみて周辺の振れ測定で0.03以内と良好な値でした。
再度ミッションドッキングして、今度はシフトレバーももちろんちょうど良い位置になりました。
フライホイールパーツ入荷待ち含めて次の日の夕方にはリカバリーできました。
昨日の突風でイチョウが盛大に落葉しました。
3日後、愛知のAさんが取りに来られて無事自宅まで帰られました。
71A3分割スペシャル γ18~に続く こちら