2024年9月25日
Z432 S20ENG用71A γ50 フルオプ
何回かオーダーいただいている豊橋の方よりZ432用ミッションをご依頼されました。
71A3分割 S20用ですのでベルハウジングが純正S20エンジン専用となっており、L型とは形状が全く異なります。
この個体にはこのスピードケーブル取り出しアタッチメントが付いており、かなりレアなパーツだと思います。Z432にはこれが付いていることが純正の一つの証であるようです。これを付けると高速スピードでもスピードケーブルに無理が来ないので、おそらくスピードメーターの針も安定するのではないかと思います。自分も探したのですが入手はできませんでした。
ミッションギヤ取り出しました。
ミッションケースはウェットブラストオプション選択されていますので加工に出します。
この個体は一度分解されている感じがあり、このM38ナットはタガネ攻撃はされていないきれいな状態でした、が緩みはなかったのですが、今回分解しようとして緩めようとしても全く緩みません。最終的にはスパナに1.5mの延長パイプ付けて目いっぱい回してやっとバキッという音と共にやっと緩みました。
分解していって致命傷はこのシフトフォークの摩耗でした。爪の先端は本体は画像の様な段だんは無く真四角の爪なのですが、こんなに摩耗してしまっています。
本来は7mmあるはずの爪幅が4mmしかありません。これではシフトの前後方向ストロークはレバー比から言ってこの5倍=15mmは無駄なストロークが必要になっていたことと思います。
3-4シフトフォークの爪が収まるスリーブ溝について調べるとやはりこのように段付き摩耗が有ります。
本来、7mmのはずの溝幅が測定すると8mm近くになってしまっています。このスリーブは再使用できないです。
さらに調べてゆくと1-2のスリーブの歯が1か所(画像中央部)が欠けています。このスリーブはオシャカです。
各段のシンクロの摩耗状態は殆んど見られません。おそらくシンクロを何度か交換していると思います。
シンクロについては全ギヤリング裏返しを実施してそのまま再利用とします。
これだとほとんど摩耗していないので交換しなくてもOKです。ただし裏返しは実施。
私のところでは8月からこのポルシェシンクロは原則再使用できるものは再使用することにしております。摩耗がひどく再利用はできないので交換という場合は、8月以降実費(実勢価格)交換扱いに移行しておりますのでご了解ください。
今回は全シンクロ良好なので追加費用は発生いたしません。
1速です。これまたシンクロリングは健全ですので、ここもCリング裏返しで対処いたします。
ギヤ部分の組付けが完了しました。
ギヤ精度
EP 0.13 0.21 0.24---0.07
BL 0.13 0.13 0.14ーーー0.07
2、3速のエンドプレイが大きめではありますが、バックラッシュは全段 良好です。
上段が今までついていた純正シフトフォーク2点支持で爪が2か所でその位置が周上180度をカバーできていませんのでこれで押されるスリーブが傾いてしまうのは必然です。
今回は下の段の3点支持フォークに交換してゆきます。フォークの又のところにもう一か所ガイド面が有りますので、スリーブが傾いてしまう事を防いでくれます。
シフトフォーク・シフトロッド組み立て
ケース側の準備に入ります。
シフトコントロールピンはZ432用71A純正はオーリングが各1本設定されていますが、これでもオイル漏れは起こります。オーリングはすでに丸断面でなく四角断面です。
今回はオーリングを交換するのはもちろんですが、オーリング2段加工に改造してゆきます。
リヤエクステンションのストライキングロッドが通るこの穴もオイル漏れの頻発地ですので、ここについても私の編み出した一工夫、オーリング2重化加工をしてゆきます。
ケースにいつものように組んでいきます。
リヤエクステンションにベアリングを打ち込み、そのあとオイルシールを打ち込んで、そのあとフランジコンパニオンを取り付けますか、この時スプラインからのオイル漏れを防ぐため少量の液体パッキンをベアリングとの合い面に塗っています。スプラインのガタがひどい場合はここにオーリングを追加設定する場合もあります。
スピードピニオンに専用のアウトプットギヤを取り付けます。
このパーツの中のアダプターピンですがこのような代用品がはいっていました 。本来は丸軸に枝が出ているようなパーツが必要ですが、すでに入手は難しいので今回は今までどうり組んでおきます。何とか普通に回転してくれることを祈ります。
ウェットブラストしたケースに組んで回転試験しています。問題は無いようです。完成となります。
2024年9月29日
SR311 71A3分割ミッション γ51
製作開始です。東京のSR311オーナーからご注文いただきました。
ドレンプラグを外すとかなりの量の鉄粉が見られます。鉄片ではないので重大な破損ではないとは思いますが、鉄粉の量が少し多めかなと思います。
ストライキングロッドのこの部分にかなり錆びが有ります。ここも通常は錆びない部分なので、原因がよくわかりません。
ギヤ一式取り出しました。
71A5速オールポルシェシンクロのギヤ組です。
左が3速で右が2速のポルシェシンクロですがこの状態で見ても完全に摩耗が発生して金属地肌が出ている状態になっています。
こちらの1速はもっとひどい状態で摩耗しています。
従いまして1,2,3速のポルシェシンクロリングは交換が必至です。
私のところでは8月より71Aポリシェシンクロ全バージョンにおいてシンクロリングは実費交換となっておりますので、γバージョンで合っても追加費用となります。
ポルシェシンクロリング新品は実勢価格18000円/1個となりますので3個分だとかなり追加費用です。
中古良品がある場合それでよければ9000円/1個
となります。
3ー4速のシフトフォークとスリーブですが、この状態で見てもかなり摩耗しています。
横から見るとこんなに摩耗隙間があります。シフトフォークはオシャカですが、場合によってはスリーブもだめかもしれません。
シフトフォークは今回3点支持フォークに交換オプション選択ですので手順で交換できます。スリーブについてはどうしよう。
分解に入りましたが γ50と全く同じ感じでM38ナットがダブルナットで無茶苦茶締められていました。2mの延長パイプを工具に指してやっとバッッキーーンと言って緩んだのでまあ固かったけど緩んでよかったと思っていたのですが、メインシャフトネジ側を見るとこの細目のM38ネジ山は破壊されていました。これを見ると一目瞭然、ナットの締めすぎでネジ山が破断している状態です。私が常々言っている「ねじの締めすぎは百害あって一利なし」が具現している状態です。失礼な言い方かもしれませんが「緩むんだからそれ以上に締めればいいんだ」という理論は乱暴すぎ・・・。sr311のメインシャフトはすでに出てきませんのでこれをこのまま使うしかなくなります。
遠目に見るとこんな感じ。ネジの部分だけ黒っぽく変色しているのも少し気にはなります。ナット締めこみ時何かケミカルか熱を使ったのだろうか?
ばらしてゆくとこの5速-バック ハブが欠けていました。切断面が古いのでだいぶ前に欠けたのだと思います。位置的にバックのシフト位置なのでバック時に何かが起こったのだと思います。欠けたかけらは今回出てきませんでした。
対処としてはこの切断面をなだらかにグラインダーかけて、パーツとしてはこのまま使います。欠けたところが2山だけなので支障は無いと思います。(部品としてはこの部品は中古品で在庫があるにはあります)
1stシンクロ 完全にダメレベル
以下、ポルシェシンクロのCリングにつきましては8月より新品交換は実費追加費用となります。
中古良品での交換も状況により可能でして、こちらの方が費用が少なくて済みます。
オーナー様が中古良品での交換を選択されましたので交換してゆきます。
これが中古良品のCリング
数に限りが有ります。
2ndギヤ 激しくダメレベル
シンクロ舳先もかなり丸くなっています。
何とか使えるレベルかな。
2NDギヤはあまりにもシンクロ舳先が丸まりがひどかった(画像上右)ので別の中古良品(画像上左)へ交換しました。
3rdギヤ シンクロCリングはこれも交換したほうが良いレベル
組付けに入っています。
センターベアリングに加えて後ろに見えるベアリングシムを必ず入れます。時々入れ忘れている個体を見かけます。
フロント側ギヤ組完
リヤ側 今回トラブルの在ったM38ナット部はニードルベアリング仕様に改造します。これでバカみたいにM38ナットを締めあげなくても緩みは出なくなります。シングルスカート付きナットでサイドロックとスカートカシメ併用での固定となります。
ギヤ部の組付け完了です。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.08 0.18 0.24 ーーー 0.06
バックラッシュ
0.08 0.18 0.15 ーーー 0.08
3RDのエンドプレイが大きめですが他は規格の下側に揃った値で良い状態です。
リヤエクステンションの仕上げに入っていますが、画像の部分のコントロールピンの蓋がネジを緩めようとしたとたんにポロリと落ちてしまいました。
ねじ頭はともかく、残ったボルト部分の取外しに苦慮します。これが取れないとこのリヤエクステはオシャカです。
矢印の油が付いていないところだけが繋がっていた状態でほぼ全周亀裂が入っていたことが判明
残ったボルト部分を少しずつ回して、最後はペンチでつかんで回して何とか取り外します。この方法で撮れない場合は機械にセットして少しずつ削って取り外します。
ネジとしては温存していた在庫の中から探し出してきました。幸い適合するものが有った、良かった、
SR311のシフトコントロールピンは私の知る限りすべて右側のオーリング無の素通しピンです。これではオイル漏れ放題なので、左側のようにオーリング取り付け追加工を行います。
リヤエクステのコントロールアームの受けはシフトの前後ストロークで常に荷重を受けるのでこのように摩耗してしまいます。
この摩耗分シフトの前後ストロークがガタになるのですがここは修理が困難なのでこのまま行くしかありません。
リヤエクステの組付け
ベアリングを打ち込んで
オーリングを取り付けます。
その後、リヤコンパニオンフランジを取り付けます。
スプラインからのオイルにじみ対策は今回はガタが少なそうなので液体パッキンで対処しました。
ケースに組付け完了
回転試験を行っています。
問題ないです。
シフトリンケージ部分です。