ME-4
L型魔界エンジン、ME、フルチューン、L6、L型、77度カム、鍛造ピストン、軽量コンロッド、圧縮比、ビッグバルブ、アルゴン盛り、ツインアイドラー、ポート加工、
その1 素材エンジン
その2 ヘッド加工 その1
その3 シリンダーブロック加工
その4 パーツ類リフィール
その5 エンジン組み立て
その6 補器類
L型エンジンヘッド加工
ヘッドとしてはこれから
・ポート加工
・燃焼室加工
・バルブ系加工 ビッグバルブ
・メンケン
等を主として機械加工を実施しますがその前にまずヘッドの弱点の補正を行っていきます。ヘッド上面にはカムが付いていてカムはカムホルダーで保持していますが、カムホルダーは右側の片側列はM8ボルトで止まっているだけです。左側列はエンジンヘッドボルトM10で共締めとなっている。
ヘッドはアルミでできていて先ほどのカムホルダーのM8ボルトはそのアルミ面に直に留められているのですが私見ではありますがここは強度的に非常に無理がありそうです。ねじ面がアルミなのであまり強く締めれないし、無理するとアルミのタップがズル剝けます。実際にそうなっているのを何回か見ました。
こんな状態でこれからハイカムでものすごいリフトストロークにして、バルブスプリングは10000rpmまで保つという超重荷重スペシャルにするのですからこのカムホルダーにはさらにものすごい力がかかるのです。
そこでヘッドのカムホルダー固定タップの右側列は全数ヘリサート加工してネジタップの強度を上げます。
サイズアップも考えたのですが、カムホルダー側の柱の太さに余裕が無いので無理でした。
ヘリサートのオーバーサイズタップをねじ切りします。この後ここにM8のヘリサートをねじ込みます。
ヘリサートというと良くネジがつぶれた時の救済処置としか見ていない人が多いですが、私はそう考えてはいません。ヘリサートを打つことでネジサイズが上がったのと同等の効果があるし、アルミネジのもろさ
(機械の世界ではA2017ジェラルミン以下のアルミ A6063などには強度が必要なネジ加工は無理があるとされています)もヘリサートのステンレスネジにすることでリカバリーできます。エンジンでもミッションでもアルミに直ネジ切りしているところはできるだけヘリサートを打って補強するのが良 と考えています。(ただしヘリサートは失敗するとヘッドそのものがオシャカになる場合が有るのでスキルが必要です)
さらにこの部分のネジも拡大します。
ここは普通はチェーンの張り調整をするための作業用蓋が付いているところで、ただの蓋ですのでM6が3本という小ささです。
カメアリのツインアイドラーはここにアイドラーギヤのホルダーを取り付けるのですがそのM6の3本をそのまま利用してセットしています。
私はその場合はここはM6が3本ではかなり無理がありそうだということでM8を3本ネジに追加工します。
加工のためにはヘッドを立てなければならないので加工方法に苦慮しますが、私はこの超小型ラジアルボール盤で固定治具を作って定盤の場外で加工ができるように改造していますので正確に楽に加工ができています。
この後ヘッドとしては
・バルブガイド抜き取り
・ポート機械加工
・ボート手仕上げ
・バルブガイド打ち込み・仕上げ
・バルブシート交換・仕上げ・すり合わせ
等の手順になります。
先ずは機械加工に出します。
2021年12月25日
ヘッドがまず第一段階の機械加工から戻ってきました。N42ヘッドでアルゴン盛りまではしない仕様で進んでいます。これからマニフォールドの拡大作業と仕上げ作業に入ります。エンジンのパワーに直結する核心のポイントとなります。
バルブシートはビッグバルブ化とレース用シートカットの為に新たなバルブシートに打ち換えていて、まずは新しいシートが打ち込みのみされている状態で、シートカットはしてない状態です。この状態でマニフォールド加工した方がシートカット面を傷つけるリスクを避ける事ができます。バルブシートとヘッドバルブ穴とは大きな段付きが出来ていることが見えますが、これをスムースにツライチになるまで拡大加工して、ガスの流れを増大しつつスムーズな流れになるようにしてゆきます。
こちらはインマニ側です。
インレットのみ機械加工で入り口付近を拡大加工されていますが、これからその奥の方までマニ径を拡大加工してゆきます。エグゾースト側は機械加工してありませんがこちらも拡大加工してゆきます。
マニフォールド加工で最も気を付けることは削りすぎや削る方向がまずくてマニフォールドの壁を突き破ってしまうことで、そうなると冷却水がその部分に入り込んでくることになりとてもまずいです。私のME1エンジンではその事故が起こり苦労して塞いだわけです。(状況はこちら)
また、冷却水通路でなくてもヘッドボルトの通し穴にぶち当たることもあり、その場合も問題です。
私のME1エンジンでは2カ所もそんな事故が起こりました。そこも裏技で塞ぐことはできるにはできるのですが、突き破らないに越したことはありません。
方法としてはこのような目標とするマニフォールド径の治具を作ってマニフォールドに通しながら削り進めてゆきます。
この加工についてすべてをマシニング加工でやってしまう方法が開発されていますのでそれでやってしまう方法もありますので選択肢としては良いと思います。
私は手作りの味で行きますが、今回は工具に投資して超鋼バー専用に開発されたエアーグラインダー(すごく使いやすいです)とアルミ専用超鋼バーの選定と種類の充実(今までとは比較にならないほど切れ味が良いです)でサクサクと加工できています。
マニフォールド拡大作業をしています。
ほぼ完成した状態。
機械加工で洗加工した状態から、手作りの味で仕上げています。今回はインマニはΦ37の治具がすんなりと通過できるように加工しています。
インマニ加工
ヘッドの水路を突き破らないよう、またヘッドボルトの貫通穴を突き破らないよう微妙に削る方向を変化させて削っていき、Φ37が通過できるまで削ります。
インマニ側
排気側もこんな感じで仕上げています。
ヘッド側
新たに打ち込んだレース用ビッグポート対応シートリングとの間に有った段付きは削り込んでスムーズになるまで仕上げています。
インもアウトも加工前に比べれば格段に穴径面積が拡大していると思います。
こんな形に削っています。バルブガイドの所に残したリブ状の部分はこう見ると妙ですがバルブガイドを打ち込めばもう少しカッコ良くなると思います。
手作りの味です。
あと、若干ではありますがバルブガイドの支えになりますし空気抵抗を減らす助けにはなるかもしれません。
あくまでも手作りの味です。
排気側もこの通り
後この部分ですが、中央のリブ部分はボアのΦ89への拡大でうっすらとケガキが見えるところまで細くなってきます。そうするとこのままではシリンダーに対して変な段付きになるし、バルブ開口径としてももったいないことになります。
機械加工でバルブ中心からのカッター径で座繰りがされてきますが、削れている部分は少ししかありません。部分的にはΦ89のケガキギリギリまで来ています。
これをさらにハンドワークでなだらかに拡大してゆきます。
ケガキ線を越えるリスクもあるので慎重にやる必要がありますが、バルブのガスの流れを勘案して加工してゆきます。
あまり拡大すると今度はボリュームが増えて圧縮比がでなくなりますので、ほどほども必要となります。
仕上げ加工が出来たらマニフォールド拡大作業で水路やボルト穴を突き破っていないか漏れ試験をします。
4kgで空気圧をかけて水中に沈めてブクブクと泡が出てこなければOKと判断します。
水路側から圧力がかかるのでマニフォールドにピンホールが有ればわかります。
アルゴン盛りをやった場合はヘッドに数カ所ある砂抜き穴を塞いでいるヘキサゴンプラグから漏れる場合がかなりの確率で起こりますので、その場合は一度外してシールテープを付けなおして増し締めして止めます。
この右側面には打ち込みプラグがあり今回も交換打ち込みましたがその部分の漏れ確認もします。
今回はアルゴン盛りをしていないこともあり一発でokとなりました。
この後機械加工屋さんに送ってバルブガイド打ち込み・仕上げとレース用シートリングのシートカットと仕上げをやってもらいます。ビッグバルブとします。
2022年2月7日
シリンダーヘッドが
ビッグバルブでレース用シートカット
ヘッド上面を基準だし最小メンケンをしてからバルブステム突き出しをそろえてシートカットの沈め量を決めて加工してもらいます。
バルブガイドはレース用で打ち込み直し、リーマ仕上げを実施。
アルゴン盛りはしていないので燃焼室としてはN42の純正そのままです。今回はカムを73度Aで行くので圧縮比を10.5~10.8を狙うのでアルゴン盛りは不要となっています。この73度Aカムは3000rpmからの実用域でトルクが驚くほどぐっと盛り上がる良いフィールのカムで、走って楽しい感じになると思います。
かなり機械加工で形状追い込んではいるのですが、やはりさらに吸排気の効率を高めるハンドワークが必要と思います。
バルブガイドを打ち込んだところですが、マニフォールド拡大加工で残した手作りの味がこんな感じで見えます。
こちらは排気側 。同じく手つくりの味
燃焼室のさらなる加工に備えて加工範囲をわかりやすくするため専用塗料でブルー着色しています。