２０２４年３月15日

アルファロメオ　ジュリアスーパー　の時計修理

福岡のアルファ　オーナーの方から時計修理の依頼です。私のＳ３０Ｚの時計修理の記事を見て、何か感じるところがあったのでしょうか、畑違いの私のところへ依頼をしていただきました。

　メーカーはＶＥＧＬＩＡというところの電気式３針時計です。

早速分解してゆきます。

内部の機構を見るとＳ３０Ｚの電気式３針時計にかなり似ているところが有ります。この辺の技術事情はどのようになっていたんでしょう。日本だとＪＥＣＯかリズムなんですがね。関東精機もありますかね。海外ではＶＤＯとかがあったような・・・。

内部をよく観察してみると画像の青い丸で囲った部分の白いプラスチックの部品にヒビが入っていることがわかりました。ヒビが入ったことで丸い本体から外周にたくさん飛び出しているヒゲの様な物のピッチがここだけ広くなったことにより、時を刻む装置（画像の下側の白いプラスチックパーツ）がここで止まってしまいます。（その右側にはマグネットが付いたフライホイールとゼンマイが見えます。これが振り子運動をして時を刻みます。）しかも今までこの状態で無理に回転していたので前述のヒゲの厚みが全周不規則に削れてしまって

ヒゲが無くなってしまいそうな感じです。

その部分の拡大です。

左側には削れたプラスチックの屑が沢山散乱しています。ヒゲの間隔がこの割れている部分だけ広くなっています。

どんどん分解して問題のパーツを取り出します。

このパーツが補修部品としてあったと思われる１９６０年代当時ならこの部品を交換すれば修理完了できたんですが２０２４年の現在では探し出すのは無理でしょう。もっとも当時ならこんなところは直さないで時計ごとアッシー交換かな・・・。

オーナー様と相談して、もうダメ元で良いので何とかやってくれという事で、こんな風にしてみました。

これで取り付けようとしたのですがジェラルミンの追加部品がフレームと干渉して組付けできません。

ジェラルミンの補強タガを限りなく薄く作り直して再度トライしたがまただめで。このあともう一度作り直しました。

組み戻しています。

何とか元どうりに組み戻しましたが、稼働試験でさらなる問題が発生しました。

・手動できっかけを与えないと起動ができない

・６０秒しか動かない

うーん　かなり煮詰まってきた。

もう何度　分解組み立てをやったことだろう。

この時計でも時計の調子を取る調整箇所が

何か所もあり、それらの調整の順列組み合わせで何とか動かしたいんだが・・・。

何時間もずっと下を見て時計に集中するので首や肩が異様に痛くなり、目の焦点がずれてきます。

うーん　頭の中はもう７０％くらい

”無理　無理　無理”　で埋まりそうになっています。

この後、さらに何度ももがいて何とか安定して稼働するまでにこぎつけました。

・安定して回らなく60秒で止まってしまうという問題は、やはり亀裂の入ったギヤのヒゲの編摩耗が原因でそこを何とか直しました。その後もいろんなところを調整したのですが、ヒゲ保全が安定稼働に最も効果が有りました。

時計の稼働チェックです。

ほぼ正しい時間を示しています。

これでＯＫと思ったのですがこの後、起動試験で又迷宮に入ってしまいました。起動が５０％の確率しかありません。仕方なく　またまた、観察し続け、この時計には起動装置が設計されていることを突き止め、それが現在はうまく機能していない状態（内部のスプリング類のへたりの様だ）であることがわかり、そこに秘密兵器を仕込むことにしました。効果は有るのですが、それでもこれも完全では無いようですが、仕方ありません。

風防ガラスの組付けに入ります。

ガラスは何やらベージュの様な色に変色していて、これを付けると肝心の時計盤面は全く見えません。

中はほとんど見えません。

対策で風防ガラスを新たに作りました。

こんな感じできれいになりました。

風防を取り付けて復元となります。

ガラスがきれいだと気持ち良いです。