2015年8月8日

S30Zシートの修理

S30Zに限らず旧車はこれが付きものですね。

塩ビシートはどうしても経年劣化して硬くもろくなってしまいます。

表皮だけ交換する着ぐるみも売られていますが、今回なんとか現物を修理します。また、クッションもヘタリますので乗り心地を検討します。


とりあえず分解します。シートの柄が横パターンでエア抜きが4個付いています。クッションはバンドでは無く、金属スプリングになっています。


助手席は縦パターンのデザインでちぐはぐですがどちらが正規かはわかりません。

先ず、シートレールを外しますが、裏側からナットで締まっていますがクッションとの隙間が狭く、さらにナットの受け台座周囲には補強リブがあるのでスパナが入りません。最終的には画面右下に少し見えているフレキシブルソケットレンチで外しました。


この後シート周囲にある固定爪を起こして外していきます。

分解できました。


スポンジクッションは思ったよりしっかりしていますが、お尻の部分はやはり劣化して来ています。またフレームのスプリングもヘタッテいるようで手で簡単に凹みます。乗り心地としてはスプリングが効かず直接フレームのパイプ部分に尾てい骨が当たりながら運転している状況でした。

先ずはスプリングの対策ですがフレームの形状を利用してソファー用ゴムバンドで補強します。4枚がさねでやっと効果が出る感じでした。

でもこの対策でフレームへの加工一切不要で太い番線でフックを造っただけで出来ました。

フレームのシートバックの立ち上がりステーのこの部分にちょうど穴が2個ありました。そこに針がねフックでベルトをかけます。

シートバックの取り付けに対してもちょうど干渉しない部分でした。

シート座面フレーム後ろ側から見ていますが、スプリングはずいぶん高い位置にあるように見えますがこの状態で上に座ると机の面まで底付きしてしまいます。それで尾てい骨が丸フレームに当たります。実際のシートは取り付けレールに乗っているのでお尻は車の床面までは達しませんが。

スプリング上にあるのが追加したゴム帯でちょうど良い高さになります。

そしてさらにこれを準備

ゴム帯を前後丸フレームにかぶせて、中央部でやはり番線針がねで繋いで止めます。

これもフレームへの加工は一切不要でした。

裏からみるとこんな感じ。

留め金がすこしゴツかったですね。

座面後ろ横から見るとこんな感じ。

相当がんじがらめにゴム帯受ける体制になりました。

あまり固くなりすぎても乗り心地が悪化すると思いますが、その場合は番線の留め金を外してゴム帯の量をだんだん調整出来ます。





フレームに関してはここまでとします。

さて、いよいよシートの修理です。


直せなければ捨てるしかないので背水の陣で行きます。本来はこの部分一角全周の縫い目を外して取り外してから同じサイズのレザーを切りだして再度縫製すれば完璧ですが難しいです。この部分の縫製はパイピング材もあり、裏スポンジもあり5枚重ねて縫製しています。

シート部分の修理ですがこれを使います。

これまた古いミシンです。

セイコーの腕ミシン TEー5ですが、袋物専用のミシンでカバンや靴などの縫製に使われるものです。

革で5mm厚くらいまで縫えます。

 

購入の主なきっかけは自転車用のツーリングバックを製作する目的でしたが、まだ実現していません。

 

最初はこの黒っぽいミシン本体のみ入手しました。1960年代の機械と思われます。今は縫製はほとんど海外ですから国内での入手は難しくなりました。

机部分は自作しました。

元々は足踏み式のミシンだったようですが足踏み部分は失われているので、このクラッチモーターと言うものを取り付けます。モーターの後ろにクラッチがありペダルを踏むと回転接続、離すとブレーキがかかります。

 

本当は足踏みの方がスピードが自由なのでやり易いのですが、このクラッチモーターは工業用なので恐ろしくスピードがでます。片手間ではコントロールできないのでインバータをつけてスピードを落とします。

シートの亀裂が入った裏からこのようにレザー材で当て物をして両脇を縫いつけます。

まず片側を縫いました。針は#18 糸はビニモの#8 シートと同じ様なサイズを選びました。縫いピッチも揃えます。

両側縫いましたが合わせ目が開いてしまいます。そこでさらに布端すれすれで縫いつけます。また内部のスポンジが目立つので黒く塗って行きます。

左側の同じ部位は亀裂は入っていませんでしたが、同じように弱くなっている可能性があり、また右側の追加縫製とバランスを取るため同じように補強しておきます。

あと、全体を見て亀裂や弱っているところが有れば同じように補修します。


これでシート部分は完成ですが、結果的には亀裂の入ったところの補強は出来たのですが開いたシート地の端が手で触ると引っ掛かります。座ってしまえばいいですが乗り降り時、衣服に引っかかる恐れがあります。実際に支障がでたら接着剤で固めるしかないです。

次にクッション部分の修理で、両サイドの下面側がザクザクになっているので表面を残して切り取ります。

このように切り取った部分にソファー用のスポンジを成型して取り付けます。厚みは今までの2倍くらいにしました。

スポンジ押し込むのにすこし苦労しましたが無事入れ込み、元どうり固定フックを押さえてほぼ完成。右側がすこし出てるかな・・・。

厚みも十分に復活しています。

特に両サイドはスポンジを厚く固くして補強したので、腰をサポートしてくれるはずです。

シートレールを取り付けました。

シートリクライニング機構です。私は前職でこのような部分の部品も扱っていましたので懐かしいです。リクライニングはギヤの噛みあいで行うのですが、そのギヤのモジュール=歯の大きさをいかに小さくするかがリクライニングのピッチをきめ細かくする決め手になるので、製作用の金型の強度限界まで小さくして造っていました。

リクライニング機構を取り付けました。

やっとシートの形に復元しました。

座面はこんな感じです。

取り付けた状態。

見たところはシート亀裂は無くなり、補修跡も違和感を少なく出来たと思います。縫い合わせ部の引っかかりも心配したほどでは無いです。

さて。クッションですがあれだけゴム帯を追加したのですがそれでも一番下のゴム帯まで下がります。フレームまであと3cmぐらいです。

スポンジもかなり増やしたのですがまだまだ硬くても良さそうで、やはりスポンジは硬いタイプ(スポンジには数種の硬さ区分が有る)を使うべきでした。硬い芯部が有ってその表面にごく薄く柔らかい層が有るというのが正解のようです。高級ソファーもその様になっていると思いますが、この加減はかなり経験を積まないとマスターできそうにありません。


それでも今までの腰がずり落ちてしまうようなグダグダ感は解消し、快適なドライビングポジションが出来たので良しとします。次はもっとうまく出来そうです。 終わり