魔界エンジン MEー6 製作開始 2023.6月
静岡県内の方から魔界エンジンの製作依頼がございまして、開始いたしました。 画像は今まで使っていたエンジンを支給されたもので、ある程度はチューニングされているが調子が良くないとのことで、不具合箇所は修理してほしいという要望です。
ME-6ー5 ME-6エンジンに組み合わせるΩ OSクロス組のミッションを製作
ME-6-1 素材エンジンの調査
外回りのパーツを取り外していきます。
画像ですでにディストリビューターを取り外しています。上の画像で分かる通りディストリビューターはいわゆるデカデスビで 内部はフォトタイプの固定進角となっているものです。チューニングエンジンで良く交換されている場合がありますが、私はこれを使いません。なぜなら固定進角という事は当然すべての回転数で上死点前32度(仕様によって違う)の点火タイミングとなりますので、普段走りで多用する3000RPMぐらいまでの回転数範囲でもすべて上死点前32度ですので例えばアイドリング時は適正点火時期は上死点前15度くらいですので、これを32度にするとエンジンが逆回転しかねないほど早期着火です。エンジン的にはその範囲では常にノッキング気味で回っていると思います。これではギリギリ強度仕様の超軽量パーツで組み、目いっぱい圧縮上げたエンジンではエンジンを壊しかねませんのであまりやりたくないです。サーキットなどで一度エンジン掛けたら常に3000RPM以上しか使わないという事でしたら点火時期誤差の原因になる(または故障の原因になる)遠心進角装置は取り外したほうが確実ですがね。どうしても固定進角にするという場合はアイドリングを2000RPMぐらいにしておく手もあるかもしれません。
ヘッドカバーを外してカムを確認するとハイカム75度くらいが入っていますがカム山はかなり摩耗しており段付きができています。カム面も少しカジリ気味ですので、このカムはもう交換時期と思います。
タイミングギヤは純正です。
75度のハイカムのタイミング調整をこれでやるのはかなりのスキルが必要と思います。偏心してついているカバーの様なものはいにしえの機械式燃料ポンプのアームを押すためのパーツです。
カムタイミングはどうなっているのか好奇心がムクムクわき出したのでここで測定してみました。これからエンジンやり直すんだから現状は関係ないといえるかもしれませんが、エンジンの状態を知るためにも今までの運転状態は大切です。ただ、この状態ではヘッドの圧縮上死点は正確には計ることができないので現状のマークを証とするしかありません。
プーリーを圧縮上死点に合わせてからソーっとプーリーを外して分度器を取り付けます。
ダイヤルゲージをバルブリテーナーに当ててクランクを回して1mmリフトの位置を調べます。
これは吸気の開き始めの値で上死点前29度と読めます。以下吸排すべて測定しましたが、結果的にはおおよそカムタイミングが3.5度早いように測定できました。(圧縮上死点が正確にはセットできないのであくまでも類推です)
75度のハイカムで3.5度タイミングが早いとすると圧縮比を上げたピストンバルブリセスすれすれのタイミングではバルブ接触のかなり危険なゾーンであったと考えられます。また吸排気的にもまだピストンが上昇している範囲でバルブオーバーラップしてしまいますのでガスの吹き抜けや圧縮不良となりやすいでしょう。圧縮上死点が正確にはセットできないのであくまでも類推です)ノーマルカムならこれくらいのズレは大きな問題ではなかったとは思います。
カムのセットはタイミングチェインの白いところで合わせますが、画像では”3”という数字のところで合わせています。純正ママのエンジンでは左側にある”1”という数字で合わせるのが出荷時のセットです。”2”や”3”はタイミングチェインの伸びやオプションカムでのセットを想定して設定されていると思います。ただ、クランク側のセット位置も同じような白いプレートを基準位置に合わせてあるのが前提ですが、仮にそれをずらしている場合も無くは無いですのでこの辺は難しいですね。
カムスプロケは全くの純正品でした。
これに矢印のロケート穴を追加工して8穴としたスプロケもありますが、今回のはいさぎよく3穴で純正を守り抜いてセットしています。かなりのスキルと見切り力が無いとできません。
エンジンヘッドの分解を進めています。
ロッカーアームを取り出しました。
状態的には悪くは無いです。
少しずつ摩耗痕は有りますが、修正できそうな範囲です。
こちら側はかなり摩耗しています。
ポート内はオーナーさんがおっしゃっていた通りパイプ埋め込みタイプですので、このヘッドはこれ以上のチューニングはできませんので、別のヘッドに交換になります。
識別記号はP79
結構メンケンしてあるな・・・・
ヘッドをはぐった。
シリンダーはきれいそうだ。
あまり摩耗痕は見られない。
ボアを簡易的に確認してみる。
Φ89近辺なのでボアアップは間違いなく行われている。
シリンダー径を精密測定した。 単位ミクロン
上面から20mmの位置
#1 #2 #3 #4 #5 #6 平均
前後 10 09 03 20 15 22 13
左右 12 06 26 20 09 30 17
上面から80mmの位置
前後 11 09 12 20 16 33 17
左右 21 17 26 33 25 36 26
シリンダーボア径 総平均Φ89.018mm
ストロークはこれまた簡易的に79と読めるので、L28クランクと思われる。
ヘッドの厚みは簡易的には105.2mmと見えるので純正108mmから2.8mm研磨されているようだ。
メタルヘッドガスケットは1.5mmと読める。
後から圧縮比を計算してみよう。
オイルパンをはぐった。
オイルパン内になにやら物体が有るので心配である。
調べたら金属ではなかったが、何であるかはわからなかった。
クランクはL28ノーマルままでキーもそのままである。ウェイト側をバランス取加工はしている。ちなみにカムチェインの下側クランク側の合わせは純正基準印位置だった。
クランクの識別刻印はP30
ウェイト側がかなりバランス取で削られている。
コンロッドは日産純正 79という刻印が見える。
チェインガイドは純正薄口品
固定ボルトも純正M6となっている
反対側も純正薄口M6で有るがボルトが一本追加工されている。ヘッドメンケンするとカムチェインが余ってくるのでこのチェインガイドは大きく張り側に動かさなければならないがそのためにボルト穴を解放端になるまで加工して寄せている。上側は変わった形のワッシャーでしのいでいるがボルトのかかりがギリだ。下側は半分かかっているというところかな。それにしても限界を追及している。これが外れるとカムタイミングがずれてエンジンが壊れるんだが今までは何とかなっていたので良かったといえばよかった。真ん中のボルトが追加されているので最悪の事態にはならないかな。
上の画像の追加されていたチェーンガイド固定ボルト穴なんですが、取り外してみたらなんと冷却水通路へ貫通していました。今度はツインスライダーを使うのでこの穴は不要なのだがどうしよう。ここから冷却水が漏れてくると潤滑オイルの中に噴出することになりますので、何とか厳重にしかも出っ張らないように塞ぐ処置をしなければなりません。
ここまで来てオイルパンの落し物が何であるかがわかったのですがこのチェインガイドのスライドゴムでした。もうゴムが経年劣化していてボロボロしてきています。
フロントカバーは強化パッキンに加えてものすごい量の液体パッキンが盛られているのでオイルポンプの通路が動脈硬化症のようになっています。
動脈硬化の部分をきれいにすると本来のオイル通路の径が現れてきました。
2023年6月24日
魔界エンジン MEー6 製作開始
静岡県内の方から魔界エンジンの製作依頼がございまして、開始いたしました。 画像は今まで使っていたエンジンを支給されたもので、ある程度はチューニングされているが調子が良くないとのことで、不具合箇所は修理してほしいという要望です。