2024年8月21日

ハコスカGTR用R192オーバーホール

R40

 

S20エンジン用ミッションに引き続き、R192デフをオーバーホールします。

外観的にはかなりオイル汚れが多く、長年オーバーホールはされていなかった印象です。ドライブシャフトとのフランジ取り付け面側はきれいで錆びていないので、純正のまま交換されないでずっと使い込まれていたのかも知れません。

リヤデフカバーもパスタが塗られているので、車検などの時に丸塗りされたのだと思います。

カバーを外してリングギヤを確認するとハコスカGTRの4.444ギヤ比でした。

この時点でのバックラッシュをチェックしたのですがなぜか測定不能(値としてはバックラッシュ0の状態でした)

また、ベアリングのプリロードの値も0でしたのであちこちガタがあるようです。

サイドフランジを取り外します。

R192用純正LSDです。オイルで真っ黒ですが、今や貴重なLSDとなります。

 ただすでに消耗パーツの供給はされていないため、LSDフリクションプレートなどが破損した場合は代替品は出てきませんし、中古ですらめったに出てきません。どうしてもだめな場合はこれと互換のLSD玉がOS技研で特注できるのでそちらに交換するのも一つの選択です。(製品としてはOS技研スーパーロックで絶対に引きずりが出ないというのがうたい文句です)

この時点でのイニシャルを測定しておきます。

3Kgぐらいですので使いこんだR192としては普通の値です。このイニシャルではLSDとしては引きずり現象は気にならなかったと思いますが、LSD作用としては殆んど効果が無かった状態だと思います。

R192LSDは組んだばかりでは5Kgくらいのイニシャルとなります。

LSD作用を増すため純正の片側4枚構成のプレート仕様を、LSDケースを加工することで6枚構成にするチューニングがございましたが、今ではプレートそのものが入手できないので実施困難です。

もう一つ、ピニオンとして純正2ピニオンに対してオプション4ピニオンが存在します。

 

フロントコンパニオンです。

ピニオンギヤを取り出しました。

ピニオン歯面です。

この光っているすべり面と歯が当たっていないところの黒い面とのつなぎ目に段差ができている場合があり、その場合は摩耗が限界まで進行した状態で使用不可(使っても異音や異常振動が出る)となりますが、今回はまだ良さそうです。

恒例のピニオンベアリングレースの摩耗状態確認です。

ピニオンフロントベアリングレース

回転方向に深い擦り傷が無数にはいっており、さらに細かな打こんの様な凹みがこれまたたくさん有り、これではベアリングの摺動面とは言えないです。

特にピニオンフロントベアリングは入手困難(私のところでは確保しています)なので余計に交換できないままというのが多いです。

こちらはピニオンリヤテーパーベアリングレース

こちらもかなり横傷が多いですが、フロントに比べればだいぶましであることが比較してわかります。

ちなみにこのピニオンリヤテーパベアリングは今でも結構手に入るのでメンテ交換されている場合が有ります。

LSDの分解を行います。

このように何かで叩いた跡が有りますので、以前に分解した履歴があるようです。

リングギヤを取り外しました。

LSDケース蓋を開いたのでLSDが見えてきました。

LSD玉を取り外しました。

LSDプレート片側4枚構成です。

反対側4枚もほぼ同じ傾向で消耗しています。

プレートを見るとかなり焼けています。

このようにスジが入っているものが有ります。

もう焼き付く寸前のように見えます。

ピニオンは2ピニオンです。

LSDプレッシャーブロックのカム山を見るとすでに段付き摩耗しています。これほど段が付いているものは今まで見たことが有りません。LSDに負担をかけるようなコーナーリングや不整地走行を激しく行っていたか、デフオイルの性能不足などが有ったのではないかと想像します。

 

LSD全体的にみるとこのままでは再使用は難しい状態だと思います。どうしよう・・・。

オーナー様とご相談してこれを準備いたしました。

OSスーパーロック R192用です。

かなり希少です。

OSのカタログには存在しません。

お値段も段違い

 

スーパーロックを取り出しました。

リングギヤは今までの物を取り付けます。

この後サイドベアリングの調整に入りますが、今回のサイドベアリング調整シム、右側はこの画像の通り全滅でした。無理やり取り外したり、無理やりこじったり、無理やりボルトを突っ込んだりしたようであちこちぼろぼろ

 このパーツについては私は復刻して在庫しているのでそれと交換して調整してゆきます。

組み込んでいます。

前述の調整シムを入れ替えながらサイドフランジベアリングのプリロードを確保しつつ、バックラッシュ調整をしてゆきます。

 

ピニオンプリロード  M27ナット30Kトルク締めで12.6K

 

サイドベアリングプリロード10.8K

 

バックラッシュ 0.11

 

でバランスしました。

正転側刃当たり

ど真ん中で調整

ここまで来るのに何回もデフ全バラ繰り返しています。

逆転側、こちらも良い当たりです。

という事ですべての調整条件が出たので、これからこれをすべてばらばらに分解します。

サイドフランジケースにベアリングを打ち込みcリングで固定しています。ここにベアリングがあるのがR192の大きな特徴で、ほかのR200やR180などのR系ではこれが有りません。

 機械設計的に言えばここにベアリングがあることは必然ですのでこれを省いてしまったのはかなり大胆な原価低減ですが、問題が出ていないんだから結果オーライかな・・・。

 

サイドフランジシールを打ち込んでから、サイドフランジを組みます。

サイドフランジはこちら側からCリングで固定しますので、アッシーすると抜くことができなくなります。

サイドフランジの取り付け

デフリヤカバーをきれいにしてから取り付けます。車検などの時にこのデフカバーまで下塗りパスタで真っ黒丸塗りにしてしまう場合が有りますが、かっこ悪いのでやめたほうが良いと私は思います。

 

 真ん中手前についているのがデフオイルドレンボルトですが、このボルト取り付け穴の形を見てわかる通りきわめて繊細でアルミ肉厚もとほとんどありません。オイル漏れを恐れるあまりギリギリとボルトを締めこむと、ほぼ100%の割合でボルト穴の下側にひびが入ります。極めて危険。

デフカバーを取り付けました。

フロントベアリングを打ち込み、Cリングで固定します。

オイルシールの打ち込み

フロントフランジを打ち込んでからこのボルトで固定します。真ん中列の平ワッシャーが左側の純正では強度不足でみんなこんな風に曲がってしまいますので、右側の強度のあるものに交換します。

下側はオイル漏れ防止のオーリングです。交換

アッシーしました。

回転試験です。

問題なかったです。

完成です。