71系ミッションのシッポの解明 2012年10月
もう何例か71系ミッションの改造をやってきましたが、だんだん71Bと71Cの変遷について解明出来てきましたが、どうもその全容は半端なく奥が深いような気がしてきました。
フロントハウジング=釜の中はだんだんと71Bと71Cで設計寸法に変更は無いことに確信が持てるようになってきました。理由はもうすでにフロントに関しては何例も流用が成功している事実が有るからです。
いわゆるフロントハウジングは71Bでそれ以外リアエクステンション含めてすべて71Cという仕様です。これはいうなれば71Cリターンズです。
71Bと71Cのフロントケースのギヤボックス軸方向の深さはもう測定済み(外外で190mm 内側深さで175mm)で全く同一であることは確認済みです。
フロントカバー
もちろんメインとカウンターの軸間ピッチは71mmで差が有るわけが有りません。だから71系なんですから。ですからフロントハウジングの中身に関しては、互換性が有る(ただしカウンターフロントベアリングと1-2速シフトロッド径は違います)と考えていいと思います。
では次にリアエクステンションはどうでしょうか?
ここはなかなか誰も踏み込まない領域なのですが、その理由は
1)なにも古い設計の71Bのリヤエクステを使うことは無い これが大部分のご意見
2)リヤエクステの中の部品は、分解が極端に難しいので触りたくない。これは私の意見
となると思います。
最終的には、もともと71Cで成り立っているのだから、71Cのリアエクステをそのまま使うのが良いに決まってるとだれしもが考えたのです。で71Cのリアエクステを使うのですが、その結果、
1)重量増加 下の画像でわかるとおり71Cはボックス型でだいぶかさばっています。
2)ミッションメンバーの無理な改造 25mmほどメンバー位置が後ろになりますので、大部分の方は
純正メンバーを中央部で切断してオフセットして溶接しています。
これだと走行中に外れる恐怖が有りますし、
重大な車体変更ですから厳密には車検時は構造変更証明が必要と
思います。
3)コンソールの切り裂き いまや貴重な純正コンソールを切るなんて・・・出来ない
4)シフトレバーの骨折・・いや曲げ加工 一度レバーを切って角度を変えて再溶接などのあまりにも無理な改造が強いられます。
(ま・そもそも旧車に71Cを載せようということ自体が無理な改造なんですが)
5)シフトボックス部のボディー穴拡大 71Cの巨大なシフトボックスを入れる為、トンネル部
をこれに合わせて拡大切り加工が必要。ハコスカ系は必須
らしいです。
また、このシフトボックスが干渉するので、トンネルの
シフトカバーゴムが取りつけできず、エンジンルーム
からの熱気や排気臭が室内に入ってきます。
こんなことしたくないですよね・・・・。
そこで今回はこの71系ミッションのリアエクステンション=シッポの成り立ちを解明したく活動を開始いたします。ー2012年10月4日
画像で左が 71B 右が 71C(s13系) のシッポです。大きさがだいぶ違いますが、71Cのほうが80mm長いですし、シフトレバーの取り付け部がボックス構造になってがっしり見えます。
でも、シフトするのは人間の腕ですから、腕力は限られていますので左側の71Bの構造では腕力に負けるとしてこの設計変更に及んだのでしょうか?どうも疑問が残ります。確かに71C右側のシフトレバーの軸受はぐりぐりタイプでいかにもお金がかかっていそうですが、重量と接触抵抗を増しただけの様に感じられます。唯一71Cで改善されていると感じられるのは、シフトレバーの中立を保つためのスプリング機構がストライキングロッドの両脇(金色に見える大きな六角ボルト)にしっかりとしたサイズで設置されたことでしょう。71Bにはこれが片側しかなくしかも小さいです。
今回、さらに画像が撮れたので追加します。
左が71Bです。 中央がs13用71C 全長が全く長いですし、シフトレバー取り付け位置も
71B 365mmに対して430mmと65mmも長い=後ろ側になります。右側はRB用のスカイラインR32タイプMなどの71C(RBエンジン)ですが、こちらは全長はほぼ同一ですし、シフトレバー取り付け位置も370mmですから71Bとほとんど変わりません。しかし71C系は両方ともミッションマウント位置が後ろ側に25mmずれ、シフトレバーの位置が大幅にずれます。
どうしてもリアエクステを71Cから流用するなら、スカイラインタイプM用を流用すれば、ミッションマウントの改造と、シフトレバーの曲げ加工で対応可能と思われます。シルビア用はそのままでは大幅なボディーとドライブシャフトの改造無しでは流用は不可能と思います。
そしてこれがシッポの内部の比較です。ほとんど同じに見えますが、上部にあるストライキングロッド(というのかな?)の径が明らかに異なります。71Bはφ14 71Cはφ16です。
そしてこのロッドの中間部にストライキングレバーが取り付けられているのですが、ここが大多数の人が分解しようとして挫折する元凶なのです。このレバーはロッドの切り欠き部にテーパーピンでロックされているのですが、このテーパーピンがどうしても抜けないのです。それでみんなここの分解を諦めるのです。そのためこのロッドの後端にあるオーリングの交換さえも出来ないという状況に追い込まれます。
そして、違いはロッド径だけでなくストライキングロッドに付くストライキングレバーのサイズが明らかに違います。
もう一点ですがシッポの外周部のアダプターとのドッキング部の当たり幅=肉厚がだいぶ違います。71cのほうが細くなっています。強度的に言うと弱くなっていると思うのですがこれでいいのでしょうか?
ストライキングレバーのアップですが、左(ピンボケですが)が71B 右が71Cです。
注目するところは、レバー左下先端の光っている部分の厚みがかなり違います。実はまさにこの部分がフロント側のシフトロッドの鍵状の部分の中をHパターンンで動いている部分なのです。
71Bは8mm厚に対して71Cは10mmくらいあります。
機械系に強い人はこれが何を意味するかもう分かってきたと思います。
N社さんはとんでもない事をしてくれましたんですね。(とんでもないことをやっているのは、私ですね。N社さん すみません)
そして、分解が難しいといわれるストライキングロッド部のストライキングレバーのテーパーピンを今日一日かかって何とか分解する方法を見い出しました。何も特殊な工具を使ったわけではないのですが、知恵の輪の様なやり方で外す方法を見つけたのです。知恵の輪と言っても治具が必要で私はこの治具を何とか作り出しました。できてみればなーんだというようなもんですがかなり苦労しましたし、何台かミッションを壊しました・・・。 このストライキングレバーの取り外し作業のご要望が多く、有料ですが対応しています。代金は18000円です。販売のページオーダーフォームからどうぞ。
左が 71Bのストライキングロッド 右が71Cのストライキングロッドです
そしてここで話が少し飛びますが、思いだしたことを記録していかないと、すぐに忘れる性質なのでおもいつくまま記録します。
上のストライキングロッドでフロントケースのシフトロッドを動かすのですが、そのシフトロッドの寸法に付いての記録です。
シフトロッドの長さですがBとCで少し差があります
71B 71C
1-2速 337mm 337mm
3-4速 337mm 337mm
5-B 334mm 332mm
と71cの5-Bが2mm短いです。その差はフロント側にあり71Bは199mm 71Cは197mmとなっています。そしてシッポ側にあるシフトロッドストッパーの位置は71B・71Cで変わりませんことは確認しました。つまり71Cのほうがバックへのシフトストロークが2mm長いことになります。 また、他の寸法が同一ならBCどちらもバックのシフトストロークは1-5速に比べて長いということになり、71Cのほうがさらに長いということになります。71系がいかにバックへのシフトにアキレス腱を持っていたかが分かりますね。
ただし、フロントカバーの座繰りを測定しないと確定は出来ません。
追記:フロントカバーのシフトシャフトが入ってきてストッパーとなるところの深さを測定しますと、3か所ともに11.75mm+ガスケット厚0.75mmで 合計12.5mm深さ となります。したがってバックのシフトストロークは2mm長い で確定です。
ちなみに、リヤのシッポのシフトストッパーまでの深さは135mmです。B.C一緒です。
これがシッポの中でもキモとなるストライキングレバーです。3個有りますが一見すると全部同じように見えますが、よく見ると3個とも形が違います。一番左が71Bから外したものです。
この3種類以外にも実際にはもっと種類が有るようです。
やはり、この部分は奥が深いようで、簡単には解明出来そうに有りませんが、トライアンドエラーで互換性を追求してゆきます。
今の私の取り柄はいくらでも時間があるというとこだけですから。
大発見!
この画像は左が71B 中がS13後期バックシンクロ・右がS13リンクタイプのストライキングレバーですが、かなり違いがあります。
このレバーを固定するテーパーピンの位置とレバー先端の実際にキーとかみ合う部分の位置寸法L寸が、複数種類あります。しかし、左と中はかなり近いです。
これは私がやろうとしていることに対して非常に大きな発見です。
これで次なる進化への糸口が見つかりました。
もう少しで私の機械系潔癖症が治癒することが出来る感じがしてきました。
71Bとしてはこの様な構成になっており、下側の部品はシフトレバーの中立復元を保持する為の部品です。画像中、上のストライキングロッドの溝部にロケーティングブロックをスプリングで押しつけています。ここのスプリングをダブルにすることで復元力=メリハリを強める改造をしている人もいるようです。
ここの溝は機械加工しっぱなしでエッジが立っているので、そこを丸めることでも動きが滑らかになります。
また左上に上下に長穴の様に見える溝はシフトレバーの左右の動きを規制する機能があり、ここの形状は重要です。単純にまっすぐ溝切りされてはいないようです。ここにはシッポからピンが打ち込まれてきます。
下の画像は、今まで述べてきたシッポの機構に対して、フロント側のリンクするシフトロッドの状況です。上側の画像が71B 下の画像が71Cです。
ここでわかることは大まかに言うと71Bのほうがこじんまりとまとまっているということです。
71Cはレバーの厚みを増して頑丈にして、またレバー間の距離も離し気味にしています。
結果的には71Cのほうがシフトレバー操作時左右のストロークが大きくなると思います。
シフトレバーの支点から作用点までの距離は71Bと71Cで形に大きな差が有りますが、その距離は同じであることは確認しましたので、これは前後のシフトストロークにダイレクトに影響します。追補:クイックシフトレバーはこの距離を長くすることで、シフトストロークを短くしています。
ここからややこしくなるのですが、この71CのフロントのH型シフトパターン構成に対して、私が今度やった71Bシッポをそのまま付けるとどうなるでしょうか?
71Bのリヤシフトレバーの幅は8mmしかありませんので、この画像に有る71Cのフロントシフトレバーの様な幅広のシフトリンケージの中では、レバー幅が遊ぶようになってしまいます。特に3-4速時のシフトレバーの左右の位置決めはフロントシフトレバーの左右の幅とシフトロッドの厚みに影響されます。(もう文章で説明するのは限界です。意味不明と思いますがあしからず)
追補:実際にはこのシフト横方向のクリアランスの増加については感覚的にはあまり違和感がありませんでした。この程度の差なら気にならないようですし、実稼働についてもほとんど問題が出ていませんので、後は気持ちの持ち様となりそうです。
それともう一点、シフトレバーの全体の左右の動き限度を規制する幅が有るのですが、これほどシフトロッドの幅に差が有ると無理を生じるはずです。そもそもシフトレバーの回転方向位置が71Bと71Cで同じかどうかに疑問が生じます。
事実、今までに作った71BコンパチCはそのままでは1速側へのシフト時左側への寄せ量が不足して、
3速とダブルチェンジ状態になり、ロックするぎりぎりの状態となりましたので、有る工夫をしてこれを回避しています。が、かなり苦しい対策であることは事実です。ただ、実際にドライブするとあまり影響は感じなくなりますが・・・。
追記:このシフトの左右方向のストロークですが、71Cの種類によってはあまり左への寄りやストローク不足が出ないものもあるようです。加工時の個体差が有るようです。
そしてとうとうやりました。71Bのしっぽに71Cのストライキングレバーの移植成功です。
私の頭の中でずっともやもやしていた部分です。
これはもう機械系の潔癖症としか言いようのない、やったことに意味があるレベルのことかもしれませんが、考え続ければ何とかなるもんです。
これで上の画像の71Cの幅広キーの中でストライキングレバーがしっくりと移動することが出来るようになるんです。だって、ストライキングレバーも71Cですから。
2020年6月20日
このところ71Bショートのストライキングロッドを分解してほしいというご要望が多いので対応しています。このケースはウサギの耳が長いので、ここに追加シフトレバー支点を追加工して、DRシフトレバーを使えば簡単にクイックシフト化できますが、今回はまずはストライキングレバー外しです。
この手の作業をお受けしております。
工賃は18000円
販売のページからオーダーフォームに記入してご依頼ください。
内部はこのようになっています。画像ではすでにテーパーピンを抜いています。このショートについてもやはり治具が無いと抜けません。
抜きました。
これでストライキングロッドやシフトブロックがすべて外せるようになります。
シフトブロックの内部のこの位置にオイルシールがあります。これがだめになるとオイル漏れするようになりリヤエクステがオイルだらけになります。
左が外したオイルシール
右2列がこれから取り付けるオーリング
形状が違いますがこの方がいいです。
私は全てこちらの方式にしています。
この右側にあるオーリングも分解しないと交換できません。中央部に光っているところはシフトの左右のクリック感をコントロールするプランジャーが作動した跡で、ここがあまりに摩耗するとクリック感が無くなってきます。(逆にいうとクリックが煩わしい場合は角をまるめればスムーズになります)裏技でここでシフトレバーを常に中央3-4速レーンに保持するように改造が可能です。
そしてこんなところも
シフトコントロールの溝が変形していますが、これも修正しておきます。
最後にリヤオイルシールを交換します。
よく見ると内部のプレーンベアリング面に三日月状のダコンが有りますが原因はよくわかりません。製造時に付いたものでしょうか。使用上は何とかなると思います。直すことは無理です。