2024年12月7日

ケンメリ71B2分割ミッションのオーバーホール

今回はこの実に貴重なミッションのオーバーホールです。乗せていた車はハコスカGTR 2DRとのことで、これはハコスカGTRによくある事例ですが、それは殆んどがケンメリ2分割ミッションのミッションを使う方法でS20エンジン用魔法の箒の名称で造ったミッション 詳細はこちら 現在までに6基作ったことになります)で、今回のように当時物純正のケンメリベルハウジング いうなれば本物は久しぶりに見ました。当時(10年ぐらい前)でもこの純正ケンメリベルハウジングは単体で80万円ぐらいしていましたので、今では一体いくらになることやら。

(実は、かくいう私もその当時この純正ケンメリベルハウジングの出物を一個思い切って買って今でも持っているんですが)

 ミッションとしてはリヤエクステがフランジ結合で中身はポルシェシンクロとなると思います。ギヤ比としては71Bノーマルと240クロスの両方が有りえますが、それはこれから分解してゆけばわかると思います。

このベルハウジングはいつ見ても鋳物の造形が芸術的にきれいです。この凛とした鋳物リブは大量生産では見ることのないオーラです。これ以外でこのようなつくりのベルハウジングを見たのは日産オプションミッションですが、かなり特別なところで造っていたのではないかと思います。

 今は復刻版が作られていてその造りもかなり良く出来てはいますが、やはりこの純正当時物とは違いは見られます。

 さてこのケンメリ2分割ベルハウジングを使う場合のミッションの組み方ですがいろいろ作り方ができるまさに魔法の箒なのですが

・もちろんこのままポルシェでオーバーホール 240クロスギヤ比ならなお良し。(もちろん組み換えは可能です)

・71Bのままでワーナー化する。240クロスでワーナー化も可能です。またその際プロペラシャフトは純正のフランジタイプままとスプライン差し込みタイプへの改造と両方が可能です。さらにクロスギヤ組もできます。

・リヤエクステを71Bのスプライン差し込みタイプを用意すれば71Bの外観で中身は71CのコンパチC α&Ω バージョンへの組み換えが可能・さらにその状態でクロスギヤ組も可能で、S20エンジン用として作る場合これが最大限の改造内容となります。この組み方でミッションをオーダーいただいてS20エンジンをドライブしているS20オーナーは少なくないです。

 

ギヤ部を取り出しました。

やはりポルシェシンクロの71Bとなります。

ギヤ比は今の時点ではまだ数えていないので240クロスかどうかはわかりません。ここはかなり重要な問題となります。

なぜかというとハコスカの本来のミッションである71A3分割ミッションは純正で240クロスとほぼ同じギヤ比で在るからで、これが変わるとS20エンジンの本来の力が出せなくなる恐れがあります。

 

ミッションギヤとしては明らかに少なくとも1度は開かれている痕跡が見られます。ミッションギヤ全体の状態や組み方には今の時点では大きな問題点は見られません。

シフトフォーク・ロッドの部分も71Bポルシェそのままです。

ギヤ部をすべて分解しました。問題のギヤ比について確認したところこのミッションは240クロスと同じであると私は考えます。従ってハコスカへのギヤ比は適合する(純正と同じ)となります。

2NDが最もシンクロcリングの消耗が大きいと感じます。このCリングは交換が良いでしょう。

3RDギヤ

シンクロCリングは交換必要レベルに摩耗しています。

1STギヤのシンクロCリングはわずかに金属地肌が見えますが、使えないことは無い感じです。裏返すという選択もあります。

4THメインインプットです。

こちらもシンクロCリングは微妙なところです。交換しなくても何とかなりそうなレベルです。

このセットプレートの皿ボルトはかなりカシメられています。ポンチマークがいっぱい。

シンクロハブスリーブです。

後ろのスリーブがいつも問題なのですが、今回のミッションは全段でスリーブの状態はすごく良く、舳先がとがっています。ほとんど新品状態。

ストライキングレバーです。取り外しています。

このギヤセットではストライキングレバーの作用点の厚みが6mmが使われていました。通常の71Bポルシェは8mmなのですが、何かの理由で6mmとなっているようです。

リヤエクステのストライキングロッドの画像真ん中についているべききストライキングロッドオイルシールは欠損していました。

このタイプのミッションにはリヤエクステ側にもストライキングロッドオーリングが有りますが、こちらをチェックしたらこちらにもオーリングが取り付けられていませんでしたので、ある程度オイル漏れを起こしていたと思われます。

組付け前のチェックで分かったのですが、1-2速のシンクロスリーブの矢印の部分の歯が2か所欠けていることが判明いたしました。ポルシェシンクロで良く見られる故障です。このスリーブは使えませんので交換が必要となります。

2速のポルシェcリングを新品に交換しました。

3速も同じく交換です。

1速と4速は裏返しを行いました。

1速、2速も組み立て準備

歯が欠けていたスリーブは手持ちのパーツの中から選び出しました。

カウンター先端がなぜかこのように削られていました。見た感じではグラインダーで削ったように見えますので、以前、なんらかの理由で削ったのでしょう。使用上は問題なさそうなのでこのまま再利用します。

1-4速まで組みました。

リヤ側を組みました。5速のポルシェシンクロは完璧に良好でしたのでそのままとしました。もっとも、この5速のポルシェシンクロcリングは完全に新品は出てこなくなりましたので、中古良品かデッドストックを探し出すしかないです。

 

 γバージョンの場合、M38ナットはサイドロック加工をするのですが今回は単純オーバーホールですのでこのまま組みますが、全くそのままでは心配なので左側の回り止めワッシャーを探し出してきて固定します。γバージョンではオプションの5速裏スラストニードルベアリングの構築を選択できますので、そのようにすればもっと完全にM38ナット緩み防止対策となりますが今回は無しで行きます。

 

ギヤ部分を組ました。

ギヤ精度

 1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ

0.25 0.12 0.14 ーーー 0.10

バックラッシュ

0.11 0.10 0.12 ーーー 0.15

値としては完璧です。

 

シフトロッド・シフトフォークの組付け

71Bは5-Bのシフトフォークがこの贅沢な真鍮色のブロックに変更になったのが目立ちますね。なぜこうしたのかはよく理解できないです。5-Bのシフトフォークについて特に今までのシフトフォークで問題あったようには見えないんだが・・・。それより1-4のシフトフォークが問題大きかったんだけど・・。

実は以上の状態でミッションケースに組んだんだけど、フロントベルハウジングのこの部分ともう一か所ネジ穴側がズル剥けしていてボルト締めで問題が出てしまいました。仕方なくまたケースをばらして、ネジ穴をヘリサート加工します。最初に確認しておけばよかった・・残念。

 しかし、純正ケンメリベルハウジングのねじ穴ヘリサート、失敗したら大変なことになるので、これまたビビりながら加工しました。2か所も。

ヘリサートしました。

リヤエクステンションはフランジタイプなのでここにベアリングを打ち込んでからリヤオイルシールを打ち込み、この後フランジコンパニオンをナット留めします。

回転試験をしています。

シフトはポルシェの中でもすごくシフトの軽い良い感じでした。回転も問題なし。

完成です。