静岡県の東部でハコスカ乗りのKさんからご連絡を頂きました。
今現在は純正の71A3分割4速ミッション(F4W71A)でオイル漏れや消耗が激しいので、この際5速にしたい。
つきましてはまだ補充パーツの問題が無いコンパチCにしたいとのことです。一挙に5ステップくらい若返りますことに・・・。
課題は
1)1速を今と同じ3.592としたい。ただし、2速 3速はダブルシンクロはマストで。
標準の71Bの1速ギヤ比は3.592でかなりローギヤードですが、2000ccノーマルで
街乗りがほとんどならこの方がずっと楽で、発進でハンクラなど必要ないかも。(笑)
あるいは L型フルチューンでドラッグレースでバリバリの場合必要ですね。
2)現在標準4速ですのでプロペラシャフトは差し込みタイプなんですが、これが5速のコンパチCに
そのまま取り付くかですが?
フェアレディーの場合4速も5速もプロペラシャフトは同じなんですが、ハコスカの場合はどうでしょう?確認してみなければなりません。
でもこれらが実現すると多くのハコスカL型エンジンで3分割ミッションに乗っている方はミッションの心配が大幅に減らせるのではないのでしょうか。これならミッションメンバーを切り貼りしたり、フロアトンネルに大穴空けたりミッションレバーがとんでもないところへ生えるという苦難などせずに最新ミッションにできるのです。
しかもギヤ比は今まで使い慣れていたギヤ比です。
ギヤ比の課題については私の技術情報のページをあさって過去に作ったギヤ比を確認してみます。
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ギヤ比の検証 以下一般的に使われている71B系のミッションのギヤ比です。
下3つが普通のZやハコスカに標準で使われているものです。
1ST 2ND 3RD 4TH 5TH
OSクロスG2 2.718 1.722 1.233 1.000 0.759
OSクロス 2.617 1.722 1.247 1.000 0.759
カメアリクロス 2.624 1.814 1.360 1.000 0.838
カメアリクロス 2.427 1.677 1.258 1.000 0.759
240クロス 2.906 1.902 1.308 1.000 0.852
ノーマル5S1 3.592 2.246 1.415 1.000 0.852
ノーマル5S2 3.321 2.246 1.415 1.000 0.852
osクロスでは発進が標準でいうところの2速で発進するのと同じ感じになります。
2速発進の練習をしなければなりません。エンジンパワーがあれば問題なし・・・。
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私がやっている71BコンパチCのギヤ比パターン
コンパチノーマル 3.321 1.902 1.308 1.000 0.759
コンパチトップロー 3.321 1.902 1.308 1.000 0.838
コンパチローギヤド 3・591 2.057 1.415 1.000 0.821
コンパチクロスH 2.427 1.677 1.258 1.000 0.759
コンパチクロスM 2.427 1.677 1.258 1.000 0.838
コンパチクロスL 2.624 1.814 1.360 1.000 0.838
全パターン 2速 3速 ともにWコーンシンクロとなります。
クロスはカメアリを使いますが、カメアリとは違い3速も全てのパタンでWコーンシンクロです。
OSクロスでも同じように出来ます。
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この中で行くとKさんの要望の1速 3.591だと コンパチローギヤドになりそうです。しかも3速Wコーンシンクロ希望だとかなり変則的な改造になりそうです。(通常標準品ではこのギヤ比パターンでは3速はシングルコーンとならざるを得ない。)いままでやっていたこのギヤ比では3速はシングルシンクロでやっていました。
今回 要望のギヤ比で 3速もWコーンシンクロにするためにどうしても必要なことがこの画像に隠されているのですが、今回まだ確立できていないのでシークレットとしておきます。でも、たぶんこの画像を見ただけで何をやっているかわかるプロフェッショナルの方は多いと思います。
そして、何時もと同じようにベアリングやシンクロを新品に交換してゆきます。
上記画面であることが突破できましたので、次の段階へ進めます。一時は出来ないとあきらめかけ、依頼主のKさんにギブアップ報告しようとしたのですが、考え続けることの重要性を久しぶりに思い出しました。でも一回あきらめることがステップとして必要なのかなー・・・。どうもまだこの感覚がコントローできないです。
前職でも何度やっても成形できないスプラインの冷間鍛造工法の検討時は、納期に脅迫されながら自分を2分割して仕事をやっていたような気がします。説明が難しいですが普通の職業人の自分の思考が底辺にあり、その上に空白地帯が少しあり、その上にあきらめを感じながらも自分の為にもがく自分がいたような気がします。
ちょっとヘンな話になってしまいましたが、今回のことが可能であればひょっとするとさらにあのことも可能になりそうなアイデアが湧いてきます。収穫です。
いつものようにサブアッシーまでこぎつけました。
ギヤ類がすべて組み付け完了しました。
この状態でミッションの精度を確認します。
1st 2nd 3rd 4th 5th
エンドプレー 0.30 0.15 0.20 --- 0.20
バックラッシュ 0.12 0.22 0.12 --- 0.18
いずれも問題ない値です。
シフトフォークもがっしりした71C用を組みつけていきます。
一番上の1-2速用のシフトロッドはφ14からφ16にサイズアップしています。
画像がかなり飛んでいますが、assyいたしました。
そして簡易試験機 e-zanaraizer に取り付けて試験して行きます。
ここで、シフトの感触、異音、スピードメーターギヤ、バックスイッチ
あとオイルモレなどをチェックします。
ベアリング、シンクロ、シールは全て新品なので異音は出ないはずなんですが、
それ以外の付属物、オイルガターとかシフトリンク関係は思わぬ干渉が有る場合があります。
もう20台以上作ってきましたが、何台かは気になるところがあり、もう一度開けてチェックしたことがあります。
そういうことがだんだん身にしみて事前に見なければならないところのポイントが分かってきたような気がします。(今は、チェックリストを作って事前チェックしています)
この試験機がなければそんなことも気が付かないで上手くできたと思っていたのかもしれません。
そして5速に入れて1時間 500rpmで回しっぱなしにします。
その時の温度上昇量を見るのですが今回は8度cの上昇でした。
過去最大で10度cの上昇があったものが有ましたからまずまずの値です。
(最低は71Aの5度c上昇でした)
完成です
フロントケースは今回ワイヤブラシで磨きました。
これでシルバーで塗装すれば白い粉吹かないし、きれいに写るのですが、
このままだとどうしてもアルミの腐食の跡が見えてしまいます。
でも、人によってはアルミの塗装を嫌いな人もいますので今回はこのままです。
これはこれで歴史を感じるし、味があっていいかもですね。
インプット部
アウトプット部も問題なし
2014年1月14日
ハコスカのミッション載せ替え作業
今回のオーナーは静岡県内在住で私のところから1時間半ぐらいの距離ですので、4速71A3分割ミッションから71BコンパチCへの乗せ換えまで通して実施することになりましたので、
私が車検などでお世話になっている近く(10分くらい)の車屋さんに乗せ換えを依頼することにしました。
ミッションは私の支給する71BコンパチCミッションです。
ここにはリフトがあるので、乗せ変え作業はずっと楽です。
ただあまりリフトを占有するわけにも行かず、やることを決めておいて段取りよくやる必要があります。(ここに限ってはかなり無理を聞いてくれますが)
旧車の場合作業していって思わぬところが壊れていたりとか、ネジがもげてしまったとか、部品が合わなかったとかが結構起こります。現代車ならそういうことが起こりにくいし最悪部品を買おうとすればたいてい買えますので何とかなりますが、旧車はそこが難しいです。
臨機応変の対応と、部品の互換性の知識と、旧車の補修パーツのつぼを押さえた在庫が必要です。
71BコンパチCミッションを準備します。
ハコスカ71A3分割4速のドライブシャフトは差込タイプですので、このまま71Bに使えるか試してみます。この車は4ドアですから2ドアより長いはずです。
事前に71A4速と71B5速のミッション関係の長さのつじつまを調べましたが、まったく一緒のようです。
忘れないように記録しておきます。
ハコスカ 4ドア のプロペラシャフトの寸法です。
ユニバーサルジョイントから画像の位置で全長 1070mm
わたしはハコスカはあまり詳しくないので知らなかったのですが、ハコスカのボディーにも2種類あるようで、ミッション関係ではフロアトンネルのシフトレバーを突き出す穴の大きさが異なっているようです。
また71Aと71Bでリヤエクステンションの形状の差からフロアトンネルのシフト穴の淵の高さを1cmほど叩いて膨らまして逃がしてやる必要がありましたが、切り取る必要はありませんでした。
結果的には、今回と71BコンパチCミッションの中でも標準には無いローギヤードを実現するということでかなり変則的な造り方をした為、1度やり直しがありましたが最終的には気持ち良いシフトができるハコスカになりました。