45年式 S30Zのオートマチックミッションをマニュアルトランスミッションに変更する
駆動系刷新・完全オーバーホール
2020年6月24日
71BコンパチC Ω27
左ハンドルのS30Zを手に入れられた方から、現在オートマチックミッションなのだがマニュアルトランスミッションに変更したいという相談を受けました。逆輸入車でボディーの痛みの少ない良好な状態でしかもオートマチック車ですから激しい運転稼働はしていないことが予想できるので選択としては有りと思います。国内でノーマルできれいなボディー、しかも下回りモノコックまできれいな個体はなかなか無いし、有ったとしてもものすごい値段となります。
はじめはマニュアル化するすべての作業を依頼されたのですが、県外でしかも国内認承まで取るとなると自分一人では荷が重いので、車体組み込み作業をしてくれる地元の専門の車屋さんを探してもらい、私の所から必要なすべての部品をそこへ供給することで話がまとまり進めていきます。部品供給のみといってももちろん取り付けに当たってのご相談はお受けするつもりでおります。
先ずはマニュアルミッションですが4速までダブルシンクロのΩバージョンを作ります。メインシャフトをはじめ多くの部品を純正新品を使います。今回はハブスリーブも新品です。
3-4速部分
左側メインインプットをダブルシンクロに換えていることが分かります。その他袋に入っているのは全て純正新品部品です。
リヤの5速、バックの部品
今回はバックまでシンクロが付くバックシンクロタイプです。ここもほとんどの部品を新品純正部品で組んでゆきます。右側の長細い箱はシフトロッド類となります。シフトフォークもすべて新品
ギヤ部について組み付けが完了です。
ギヤ精度
1ST 2ND 3RD 5TH
EP 0.23 0.11 0.15---0.15
BL 0.10 0.26 0.25---0.08
良好な精度です。
ミッション組み込み完了です。
A/TからM/Tに必要なパーツ集めです。
軽量フライホイール
クラッチディスク
クラッチカバー
エンジンパックプレート
オイル類
シフト周りの付属部品
ミッションマウント
メインインプットパイロットベアリング
クラッチレリーズ
クラッチホース
クラッチベアリング
クラッチマスター
シフトレバー
ハンドメイドS30Zシフトノブ赤バッジ
フロアダストカバーゴム
同上リテーナー
シフトブーツ
等
この後、駆動系としてデフ、ドライブシャフト、プロペラシャフトも用意してゆきます。
先ずはでデフとドライブシャフト
分解していきます。
デフはスバルのR180、特に日産R180で入手困難なLSDを、スバルR180用を使う例が増えているのでスバルLSDをS30Z用に改造してゆきます。
ドライブシャフトの分解
ユニバーサルジョイントが固着して取れない場合が多くいろいろ手順を踏み、自分で製作した特製治具で外してゆきます。無理やり外そうとすると外れないことはもとより、プレスで無茶苦茶に押したりするとヨークが曲がってしまいオシャカになります。
分解が完了してお色直しして必要部品をそろえていきます。画像ではフランジがたくさんありますが、まとめて複数作業しているためです。
組み立てに入っています。
このゴムブーツなかなか通せません。
またこの画面では十字ジャーナルが組んでありますが、ここの組み付けは知恵の輪が得意でないとできないし、ジャーナルの組み立てクリアランス=動きの渋さは選択クリップ式の調整となっています。
フランジが自重でお辞儀するようでは動きが緩すぎ、ジョイントガタの原因となります。ここも複数同時作業しています。
ボールスライドの組み立て。グリースは日産純正のボールスライド専用グリースを使います。
ここの組み立てもコツがあり、経験を積まないと何度もやり直すことになります。
なんか難しそうな事ばかりの様ですが、それだけこのドラシャは難易度が有ります。
ドライブシャフト完成
ニードルベアリング交換してクリップによるプリロード調整をしたのでジョイントがビシッとまっすぐで崩れません。これが自重でお辞儀をしてしまう場合はプリロード不足(ガタが有る)です。
タイプとしてはオーソドックスなスプライン差し込みタイプのドライブシャフトとなりますので、デフ玉に差し込んだ後付属のM10ボルトで抜け止め固定します。これで日産オリジナルとなります。
デフはスバルLSDを使うので4ピニオンのLSDとなります。カム角はスバル純正90度でマイルドな設定、LSDプレートも渦巻付きの最もマイルドな効き具合の設定でセットしてゆきます。普段使いならこれくらいでいいです。あまりに効きを強くするとちょっとしたカーブでチャタリングが起きてストレスになります。
イニシャルトルクは普段使いの3.5Kgでセットしました。
サーキット用ならカム角はもっといろいろ選択できますし、LSDプレートも渦無しのスプリングカリカリの16Kgの超過敏LSDにすることももちろんできます。
こうするとカム角がはっきりとわかります。
スバルの中で最もマイルドな90度カム
4ピニオン
LSD組み付け完了してイニシャルトルクの測定
今回は普段使いで乗りやすい3.5kGのイニシャル設定とした。
12Kgなどの強烈なイニシャルもできるがそうすると街中でLSDチャタリングに悩まされ走れなくなる。
組み立てています。
ピニオンベアリングもすべて交換してピニオンプリロードの設定からやり直していきます。
正転側歯当たり
ど真ん中といってよいでしょう
逆転側(エンジンブレーキ側)も良好です。
R180 ボディーは日産
ギヤ比4.111(ノーマルエンジンではこちらが走りやすい)
LSDはスバルの90度カム角でイニシャル3.5Kgの超スムーズ仕様
完成です。
スバルデフをそのまま流用するとスバル対応コンパニオンフランジのスペシャル部品が必要になりますが、今回は工夫してスバルLSDでもそのまま日産純正ドライブシャフトを使えるようにしました。
2020年9月25日
71BコンパチC Ω28 for TC24
お得意様のショップさんから立て続けにミッションのご依頼です。今回はなんとTC24用にΩバージョンを依頼されました。
71Cは手持ち在庫からパーツ取をして、71Bケースはフロント側としてFJ20用、リヤ側はS130用バックチェック機構付きを支給していただきました。TC24だとエンジンの傾きがL型と逆になるのでFJ20のフロントベルが必要になります。
画像、組み付けが有る程度進んでいますが、今回はセンタープレートを71Cの中でもある特殊車だけに設定されていたフラップ付きを使用します。
これがフラップで急加速した時にミッションオイルがセンタープレートより後ろ側に慣性力で逃げて行ってしまうのを防ぐ目的があります。71系をAからCまでを観察するとよくわかるのですが、センタープレートのオイル通過穴は後期になるほど小さくなって71Cでは底面側に1個のオイル通路だけになったのですが、このフラップはその最後の1個のオイル通路をワンウェイにしています。加速時のオイル偏りがかなりミッションの性能に影響したことの証だと思います。
フロント側の組み付けが完了です。
今回は純正でもなかった仕様の4速までダブルシンクロ仕様としています。
5速ーバック側はバックシンクロ付きで組んでいきます。画像のバックシンクロメインギヤは舳先が丸坊主だったので新品に交換しています。
スリーブも新品というかこの画像の中でほとんどが新品、5速のギヤ比は0.83のオプションですので当然新品です。0.83ギヤ比は4速から5速への変速レシオのつながりが良くなり5速からの加速を助けますのでこの速度域(160km以上)からの加速に効果がありますので通常はサーキットでその効果が最も現れます。
このバージョンでのギヤ比としてはノーマルが0.75(71cの5速は0.75)で、高速道路が発達してほとんど高速路を走る現代に合わせて次第にハイギヤードに進化してきています。71cではエンジンの排気量やターボのおかげでエンジンパワーが十分にあることもその要因と思います。高速でのエンジン回転を下げて静粛性、燃費改善に貢献します。
リヤ側シフトリンケージ部
ギヤ部が完成
ギヤ精度
1st 2nd 3rd 5th
EP0.31 0.11 0.20---0.19
BL0.11 0.12 0.12---0.25
理想的な値になっていると思います。
シフトフォークも71Cではおなじみのがっしりしたアルミ製スライドメタル付きとなりシフト剛性を高めます。
回転試験をやっています。
フロントベルがFJ20なのでジグが合わず苦労しています。
シフトレバーが刺さるところの支点ピンの位置は画像下側が純正の位置となりますが、今回その上にクイックシフト用の支点穴を追加しておきます。将来クイックシフトにしたいとき、別途用意となりますがDR30などの小判タイプの支点のシフトレバーを改造するとクィック化ができます。クィックシフトの作り方がこちらでご覧になれます。