2023年4月21日
SR311用 71A3分割ɤ40-Wスペシャル
香川県からこのミッションの修復をご依頼です。
このSR311用のミッションが71系の中では最も古い年代となると思います。それゆえかこの年代のミッションはかなり痛みが発生している場合が多く、しかもケース側も限界まで来ている場合が多々あります。これから分解して調べて行きます。
そして今回は71Aのフルバージョンでのご依頼ですので、まずは1-4速はポルシェからワーナーにすることで確定です。ɤバー―ジョンとしては最もスペシャルとなります。
先ずはいきなりこのプロペラシャフトと結合するフランジが錆びでぼこぼこです。この面でプロペラシャフトと締めこまれるのでまずは心配です。
ミッションマウント取り付けタップがズル剥けです。左右ともダメです。ここもネジが抜けたらミッションが暴れてしまいますのでかなりディープな損傷です。これどうやって治そう・・・
エアブリーザー
プラスチックなのでぶち飛んでます。
メインインプットの先端
サビサビです。
ひどすぎます。
これはちょっと修復は不可能でしょう?
代品を探すしかなさそうです。
ここがダメだとエンジン側のブッシュまでダメにしてしまいますので直さねばなりません。
シフトコントロール部
ここも錆びだらけ
刺さっていたシフト支点のピン
サビサビです。抜け止めのEリングは粉々になってしまいました。
ストライキングロッド
ここも錆がひどくあばた状の錆落ちが出ています。
そもそもこのままではここを抜くことができませんでした。
フロントカバーのシール
前後逆に組んであるな・・・
中身は71Aのポルシェシンクロ仕様です。
メインインプット=4速のシンクロリングが削れていてダメになっています。
メインシャフトのM38ナットはこんな感じで処理されています。緩んではいなかったので比較的最近の処理かな。
バックアイドラーはまあまあの良い状態です。パーツ交換しているのかもしれません。
うーん、メインシャフトリヤベアリングの抜け止めEリングをつけ忘れているな・・・・
左側のスピードウォームを取り外した流れの中で見たので分解時点でついていなかったのは間違いないです。
SR311用71A3分割ミッションについてポルシェシンクロからワーナー化する改造に入っています。
1速2速ギヤはすでにワーナーシンクロに組み替えてあります。そしてワーナー化に当たり右下のワーナー用ハブスリーブが必要になります。これらは部品を集めてこなければならないので、できる基数に限りがあります。 この方法が不可能になった場合は71Cにする方法もありますがその場合はミッションメンバーの改造とフレーム干渉部の一部逃がし加工が必要になりますができることはできます。どちらを取るかという事になりますね。
これが元々のポルシェシンクロセットです。
これを分解して改造してゆきます。
右上のリングが良く消耗してしまうCリング、最近価格が異常に高騰していてこれ1個で15800円です。4個交換するとそれだけで60000円・・・
半月形の2個がブレーキバンドとなりますが、ポルシェシンクロでサーボを利かす所以となっているパーツで、ポルシェのままオーバーホールする場合はCリングとともに交換するべきパーツとなります。小さな2個のキーはこれらもサーボを起こす作用をするパーツですが消耗は少ないので交換はしない場合が多いです。残りの左上のプレートは巨大なEリングの様なもので今までの部品を抑えて蓋をする働きとなります。
1速、2速です
シンクロが真鍮製の金色のリングになるのでポルシェとは一目瞭然で違いが判ります。
錆がひどかったメインインプットは全とっかえとしました。もちろん今までと同じギヤ比の物を探し出してきました。そしてワーナーシンクロ化してからベアリングを替えたりの作業となります。
メインインプットの先端はエンジンクランクの後端の軸受けブッシュと勘合するので重要です。このミッションの元々の状態のように錆びていたらたちまちブッシュが破壊されてメインインプットが首を振るようになり、それがひどく進行してゆくと3速ギヤが大抵壊れます。
1-4速まで組みました。
リヤ側 5速とバックの組み込みです。
71Aのワーナー化の場合どうしても5速はポルシェが残ってしまいます。ここは今のところ解決策が見いだされません。(71Cにする場合はここの問題は解消されます)
画像のように5速裏にニードルスラストベアリングを構築するオプションを行っています。そしてM38ナットはサイドロックボルトで緩み防止をしています。
今まで使っていたこのM38ナット緩み止めワッシャーとはおさらばとなります。
ギヤ部が完成したので精度測定です。
1ST 2ND 3RD 5TH
エンドプレイ
0.08 0.19 0.05 ーーー 0.05
バックラッシュ
0.05 0.12 0.05 ーーー 0.15
問題のない値です。
シフトフォークです。
これからこの3点支持フォークに替えていきます。
1-2速を重点的に行います。
ワーナーになるとシフトが軽くなるのでフォークへの負担が減り、3点支持ならさらにシフトが楽になります。
こちらら純正の場合のシフトフォークです。
シフトフォーク・ロッドをすべて組みました。
このリヤフランジですが右側が今までついていたもので使用できそうにないので左側のドナーを見つけてきました。
仮組していますが、この部分の受けはこのようになっています。ベアリングの後ろはワッシャーと板厚1.2mmのEリングで受け止めているだけです。
従いましてこのキャッスルナットをギリギリ締めこむことにはまったく意味が有りません。というか、かなりの割合で締めこみすぎて先ほどの受けワッシャーがお皿に変形している場合があります。
さて組み込み準備でケースの修理に入ります。
ケース全体はブラストしたので外観的には新品のようになっています。
最初にチェックしたようにミッションマウントと固定するこのネジ穴がズル剥けてしまっています。ここのねじはM11ピッチ1.25とかなり特殊なネジですので、ヘリサートしようにもそのサイズは持っていません。そもそも普通のアルミに細目のねじを切ってもネジの山が細くなりすぎて強度が持たないと思います。
私の超小型マシンにセットしてヘリサート加工を行います。
下穴加工ドリリングの後タップ加工をしています。
そしてヘリサートを打ち込みました。
ヘリサートは一般的なサイズのM12ピッチ1.5を使っています。ミッションマウントボルト穴を少し大きくする必要があるかもしれません。
シフトコントロールピンの加工
シフトコントロールピンはオイル漏れの頻発箇所ですが、右側のSR311純正の場合ここにオーリングが付いていませんので余計にダダモレです。
これを左のように溝加工してオーリングを付けれるようにします。
シフトコントロールピンを取り付けました。
この後ここにシフトブロックを取り付けます。
ここのオーリングは私はすべて2重になるようにセットしています。ここをストライキングロッドがシフトのたびに前後ストロークするのでどうしてもオイル漏れしやすいです。
取外したオーリングは手で挟んだらこのようにひび割れしてしまいました。長い時間の中でゴムが完全に硬化してしまったのでしょう。
3分割ミッションのセンター部分のケースです。
この中央部に見える真っ赤に錆びたプラグもとりはずしには苦労しました。完全に固着していましたが、ミッションオイルはどうやって入れていたんだろう。
シフトブロックを組んでいきます。
ひどく錆びていましたが磨いてここまで戻していますがいつまで保つか微妙なところです。
支点部分のパーツです。
左手前の錆びているシャフトは廃却です。
組み込みました。
これでシフト可能になります。
こちらのパーツも左側のパーツに交換です。
ケースに組んで完成です。きれいになりました。
反対側
上から。