2024年7月15日

71Aスペシャル γ48 組み立て仕上げ

 岐阜オーナー様のSR311用でγバージョンでのオーバーホールを依頼されました。

素材は送られてきたのでまずは現所把握となります。

これによってどのような修理とするか決めるので、この現状把握は大切です。

 現状把握はこちら

 

 

 

センタープレートから組み始めます。

カウンターセンターベアリングの部分にこのシムが入るはずなんですが、欠落していました。板厚1.8mmですのでこの分スラスト方向の組付け寸法が出ていなかったことになります。今回は手持ちのシムでリカバー。

ここに挟まります。

全く緩まずドリルでもみとった皿ネジは最新の日産ネジヘキサゴンに交換します。

1速のシンクロはかなり変です。

交換です。

内部の小さなシンクロ構成パーツのメーカーマークがこんな見たこともないZクラウンマークでした。

こんなマークです。

シンクロを新品に交換します。

 

シンクロについて分解して大きな問題が無いものについては流用する場合が有ります。理由はポルシェシンクロの新品パーツは初期なじみから慣らしが終わるまでに10000Kmほどかかるので、問題が無いシンクロはそのままのほうがシフトが固くて苦労する初期なじみ問題を味わわずに済むからです。

 私としてもせっかくシンクロを新品にしても、シフトが固いなどのクレームを受けたのでは立つ瀬がないですので。

 71Aのシンクロは現在ほとんど枯渇状態で今後も出てくる可能性は低くなると思いますで、今後はさらに使えるものは使うという方向性となると思います。

こちらは2速のシンクロリングの状態

みたところほとんど問題は無さそうです。

交換するかどうか悩むところですが、最初は裏表ひっくり返しで組んでみました。

しかし、オーナー様とのお話で交換して欲しいとのことでしたので交換とします。

今回は過渡期ですので、オーナー様がご希望で有ればシンクロ新品交換いたしますが、近いうちに新品は実費交換に移行いたします。

 

2NDギヤ シンクロ交換します。

内部パーツは見慣れた三菱マークの様な刻印が付いているものです。

組付け始めています。

1-2速です。

組付け始めていてどうもこの部分がおかしいことに気が付きました。

かなりひどい段付き摩耗が有ります。

これだと5速ギヤが駆動のたびに動いてしまうし、

最悪、カウンターが折れる景色が浮かんでしまいます。しかし71A5速のカウンターギヤはおいそれとは手に入らないしどうしたもんだろう。

なぜか軸の反対側はほとんどありません。

この後オーナー様と相談して今回はこのまま行こうという事で進めます。これを修理はできませんので、対策としてはカウンターギヤ一式と5速メインカウンターギヤセットで交換となりますので、それだともう一基71Aを買うようなことになってしまいます。

メインインプット 5速ですが

現状把握で述べたように全面何かがこすれていてテカテカになっています。何かというのは位置関係から3-4ハブという事になりますが、この時シンクロ作用に対して抵抗となる力が発生してしまうので、シフトはできていたとは思いますが、重いとか入らないとかの現象が出ていたと思います。

ギヤの裏側についているベアリングを外すと、こんなところにワッシャーが入っています。

 頭をひねったのですが、最初は何かの調整だろうかと思って考えていたら、前述のカンターセンターベアリング裏のシムが無かったことに関連在りそうなことが想像できました。カウンターが1.8mm後ろに下がってしまったので、ここのワッシャーを入れ替えて辻褄合わせしたのではないかと思いますが、それとも何かのチューニングテクニックだろうか?

これだとメインインプットが後ろ側に寄るので、シフトフォークが近ついてしまうのだが?それがネライ?

ちょっと理由が理解できないので、今回は純正の正規の状態であるこの位置へワッシャーを入れ替えます。

4速もシンクロ状態は悪くなかったですが、ご希望で交換していきます。

フロント側のギヤ組は完成です。

次にリヤ側5速ーバックに入ります。

こちらは消耗というか不具合が激しいです。

 

ハブが段付き摩耗しています。いずれ焼き付きます。

ここはできる範囲で切削修正です。

あまり削りすぎると表面の硬い部分が無くなってしまいますので最小限仕上げです。

ここと組み合わさる5速ギヤのスラスト面ですが、溶接したために面積が減っているうえに面にスジが入ってしまっています。

ここもできる範囲で切削仕上げしました。

ハブスリーブを組んでいます。

5速のカウンターを仮組してみると予想以上にガタガタです。 

 この原因は突き詰めてゆくとカウンターセンターベアリングの裏に入れるべき1.8mmシムを入れなかったために、カウンター後端の固定ネジが5速カウンターを締めこむことができなかったためで、この影響はかなり深刻でした。

5速メインギヤの組付けです。

今回はオプションの「5速裏スラスト」を選択されていますのでスラストベアリングをこのように構築してゆきます。今までの5速裏スラスト面が面接触だと回転方向が常にM38ナットを緩める方向に働くため、しまいにはM38ナットは緩んでしまいます。このようにここにスラストベアリングを入れることでそのナットを緩めようとする接触回転力はほぼゼロとなるため、M38ナットの緩み止めに大きな効果が有ります。M38ナットが緩むとどうなるかは今までの実例が示しています。

M38ナットは今までのシングルナットではなく、カシメスカート付き特殊ナットに変更して、緩み止めとして私の考える究極の回り止め「サイドロック」とカシメを併用して改造してゆきます。

ギヤ組としては完成

ギヤ精度

 1ST  2ND  3RD      5TH

エンドプレイ

0.13 0.10 0.16 ーーー 0.12

バックラッシュ

0.09 0.13 0.05 ーーー 0.15

 

良好な値です。

この辺りのパーツを組み込んでいきます。

特にカウンター側の固定ボルトは71AではM14ボルトという貧弱さ(71BではM27ナットに設計変更された)ですので、変形していた平ワッシャーは2mm厚の特殊品交換してさらにもう一枚平ワッシャー追加しています。そしてなぜかボルトの頭の厚みが薄い特殊ボルトが使用されているのですが、この部分の理由はよくわかりません。後ろ側のリヤエクステケースに干渉するのかと調べたことがあるのですが、全く干渉はなく余裕のスペースが有ります。以前このボルトが破損していたのでSCM材の強度区分12の通常頭サイズの焼き入れボルトに変更したことがあるのですが全く問題は有りませんでした。

シフトフォーク組付けです。

1-2速フォークはオプションの3点支持フォーク選択ですので交換してゆきます。

左が純正通常のシフトフォーク

右が3点支持フォークです。

2点で押すより3点で押す方が安定するのは当然の事です。

リヤエクステの準備です。

このコントロールピンの部分の蓋ですが、こんなにシリコンガスケット塗りたくっていますが、ここも意味不明です。この蓋には銅ワッシャーが付いているのでこんなにしなくてもオイル漏れはしません。

取り外してみると鋳物加工面があまり良くないよう、溝ができてしまっています。しかし、これくらいなら何とかなると思います。

分解していますがまた変な組付けが出てきました。

画像のスプリングはシフトレバーの左右の中立の節度感を出すための物なのですが、画像のメッキしたスプリングは半来は右側のコントロール側に付けるのが純正ですが、これでは左側についていました。この状態では1-2速側にシフトレバーを倒すときに抵抗感が大きくなっていたと思います。逆に5-B側への倒し込みは節度が足りない感じになっていたと思います。

コントロールピンはSR系はすべてこのようにオイル漏れ対策なしの素とうしですので、オイル漏れ放題です。

シフトブロックの部分です。

リヤエクステンションについてオーバーホールしています。

シフトブロックが入るところの受け面がこのように段付き摩耗しています。ここは多かれ少なかれこのようになっているので修正することは難しいいです。

 どうしても直すなら程度の良いリヤエクステを探し出してくるしかありません。

このように組まれるのでシフトブロックの前後ストロークが増すことになります。また、この部分にあるオーリングを常に押すことになるので、オーリングが摩耗しやすくなります。

コントロールピンはオーリング付きに改造してゆきます。

コントロールスプリングは通常の状態にしてゆきます。

ストライキングロッドのオーリングは2重化しています。

シフトブロックです。

ブッシュ関係がダメージが有ります。

左が今までのブッシュスプリングですが、途中で折れているため厚みが全く不足しています。

 手持ちのスプリングラスト1が有りましたのでこれに交換します。

組付けました。

いよいよケース組付けです。

71Aの場合のケース組はこのようなジグを使ってやっています。

リヤエクステンションを取り付けて、ベアリングを打ち込みます。

リヤシールを取り付けます。

コンパニオンフランジのこのスプラインからオイル漏れの事例が出ていますので、今回はこの部分にオーリングを構成します。(指の先のところ)

取り付けました。

殆んど完成に近ついています。

が、またここに戻ってしまいました。

この個体はどうも通常のと軸方向の造りが違っているようです。(それでシムがあっちこちおかしかったんですが)

特にメインインプットが通常のと異なるようです。

いろいろ調べて対策します。

何回かやり直して問題の無い状態にします。

フロントベルの準備です。

この2種類のシムが有りますので、最終仕上げでこのシム厚の調整が大事です。

何とか組付けて回転試験しています。

問題ないです。

完成です。